「小児のシュガーコントロールについて」

みなさんこんにちは。宇都宮市みろ歯科、歯科衛生士の山根です。
明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします!
まだまだ寒い日が続きますので、体調管理に気をつけていきましょう!

さて今回は、前回の続き「小児のシュガーコントロール」についてお話ししていきます。
まずは日本人の糖の摂取量についてですが、ヘルシーと言われる日本でも、砂糖の1人あたりの年間消費量は令和2年で15.6kgあり、単純計算で1日平均42.7gの摂取量となっています。これは諸外国と比べれば低い数字となっていますが、WHOのガイドラインの上限を超えてしまっています。さらに、ここには加工食品に添加されて消費されている異性化糖などは含まれていません。
ジュース等の原材料名の表示に「果糖ブドウ糖液糖」などの名称を見たことはないでしょうか?これは異性化糖と呼ばれるブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)を主成分とする液状の糖です。

これらを含む甘味全体で算出すると、日本では1人あたりの年間需要量は22.8kgとなり、1日あたり62.5gとなります。最初にお話しした砂糖の年間消費量は遊離糖の消費量は考慮されておらず、摂取基準量の設定もありません。このように、日本では異性化糖として摂取される遊離糖の問題が見過ごされていると思われます。たとえば、近年ではごはんよりもパンを好む方も増えている傾向があります。日本のパンには糖が添加されているものも多くありますので、砂糖だけではなく遊離糖としての基準が必要だと思いますが、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」(2020年版)にあるように、現在日本には遊離糖はもちろん、砂糖についても摂取を制限する基準の設定等が何も存在しません。日本で設定されるまでは、WHOの基準を参考に考えるとよいでしょう。
ではむし歯予防のために糖の摂取量を減らすにはどんな環境が必要なのでしょうか?
現状は食事指導が中心とならざるを得ないと思いますが、それがむし歯を減らすことができるのか、ということについては、実は有効性はあまりはっきりとはしていません。こうしたほうがよいと言われても、なかなか改善は難しいし、それを継続するのは困難だ、ということでしょう。幼い
子どものジュースデビューの時期は社会経済的背景と相関する、という研究もあります。個々へのアプローチだけでは限界があるということです。
一方で、砂糖税のような社会的なアプローチには有効性が示されています。WHOはむし歯を減らすための政策およびプログラムの主な指針として、
●砂糖で甘くした飲料や遊離糖の多い食品への課税
●製品に含まれる糖に関する情報を含む、明確な栄養表示の実施
●遊離糖を多く含む食品や飲料の子ども向けのあらゆる形態のマーケティングおよび広告の規制
●遊離糖を多く含む食品や飲料の販売を規制することにより、公的機関、特に学校の食環境を改善
●“歯に安全な”飲み物としての清潔な水への意識とアクセスを優先する
の5つを示しています。しかし、前述のように現在のところ日本には摂取基準の設定もなく、表示への規制もありません。日本もWHOの加盟国ですから、原則的にこれらの対策を検討すべきでしょう。個々へのアプローチももちろん諦めずにていねいに実践すべきですが、同時に基準の設定や法整備等、社会的なアプローチも実践していくことがやはり重要になるでしょう!

難しい話ですが、最後まで読んでいただきありがとうございました!
次回も続きをお話ししていきます♪