世界の子どもの歯科事情⑬

こんにちは!宇都宮市みろ歯科受付鈴木です。

 最近た、新しいことを始めました!なんとパン作りです。初めはこね方もおぼつきませんでしたが、少しづつ上達してます。今後も勉強してパンを楽しく作れるようになりたいです。

さて、世界の子どもの歯科事情はベラルーシの紹介です。 

 

ベラルーシってどんな国? 

 正式名:ベラルーシ共和国 

 首都:ミンスク 

 国土:207,600 

 人口:949万人(2018年) 

 1人あたりGDP:5.760ドル  

  ベラルーシ共和国は東ヨーロッパに位置する旧ソビエト連邦の国であり、国土は約21万㎢で日本の約半分であり、人口は949万人です。約70年間ロシアと同じようにソビエト連邦の加盟国であったため、現在も公用語としてロシア語がベラルーシ語と共に使われています。ベラルーシの医療保険制度はソビエト連邦時代から受け継いだものが数多くあり、歯科保健医療システムは隣国のロシアやウクライナと類似しています。 

 

ベラルーシの歯科医師の資格制度 

 歯科医師数は5.406(2010年)で、人口10万人あたり歯科医師数は約58名です。日本(約80名)と比較すると少ないです。歯科医師養成機関として2つの国立大学に歯学部が設置されており、教育期限は5年間です。卒業後の臨床研修期間は1年間です。臨床研修後に国家試験に合格すると歯科免許が授与されます。 

 ベラルーシでは、約2/3の歯科医師は国立病院で働く公務員です。公立病院は歯科診療を提供するだけでなく、日本の保健センターと同様に地域における公衆衛生業務を担当しています。市立医療機関の歯科部長や区立歯科医院の院長は、地域住民の口腔保健の管理者となっています。実施される乳幼児歯科健康診査や学校歯科保健活動は、地域の公立病院に勤務する歯科医師が主に担当しています。 

 ベラルーシには歯科衛生士にという職種がなく、保健指導や予防処置などを行うことは歯科医師の役割です。また、歯科助手という職種がありますが、日本と異なり看護師の資格が必須となっています。歯科助手は歯科医師の治療を補助し、プライベートクリニックでは必ずフォーハンドシステムで治療を行っています。 

 日本と違ってベラルーシの歯科医師には、卒業後の生涯教育が義務付けられています。法律に基づいて、3年間に生涯研修コースを100時間以上取得しなければ、歯科診療に従事することができません。専門医になるためには5年間の臨床経験を積んだあと専門医の教育コースを修了し、専門医試験を受けることが必要となります。歯科専門医は、補綴(647名)、口腔外科(391名)、小児歯科(275名)、矯正(116名)、顎顔面外科(80名)と5種類あります。 

 ベラルーシの歯科医師には、「2級(Second)」「1級(First)」「上級(Superior)」という3段階のカテゴリーからなる資格制度があります。これらの資格を取得するためには、法律で定められた臨床経験年数や生涯研修コースの受講時間を必須事項として、資格試験に合格しなければなりません。 

 3年以上の臨床経験および生涯研修コースを100時間以上受けると、歯科医師は「2級」の資格を得ることができます。次の「1級」の資格を得るためには、臨床経験を8年以上および生涯研修コースを200時間以上、さらに「上級」の場合は、臨床経験13年以上および生涯研修コースを300時間以上受けることが必要となります。これらの資格の有無によって歯科医師の給料は違ってきます。「1級」あるいは「上級」の資格がないと、プライベートクリニックを開業することはできません。公立病院においても「1級」以上の資格がないと、部長や院長として勤務することはできません。 

  

ベラルーシの歯科保健医療制度 

 ベラルーシでは公的医療保 

健制度があり、すべての国・市・区立の公的医療機関における基本治療は、医科も歯科も無料で提供されています。しかし、義歯やインプラントなどの高額な歯科治療は自己負担になります。保健省により自費の上限は規定されていますが、それ以下であれば治療費を自由に設定できるので、通常は私立病院の治療費は公立病院より高いです。しかし、18歳以下の子ども、障がい者、低所得者などの医療費は地方公共団体による補助があります。 

 1997からベラルーシでは、「う蝕と歯周病に対する全国予防プログラム」が導入されました。計画策定の中で、家庭や歯科診療所における口腔清掃の実施、定期的な歯科検診を受ける者の増加、フッ化物応用の普及という、3つの予防法にターゲットが当てられました。 

 ベラルーシではフッ化物の応用は歯磨剤フッ化物歯面塗布などの局所応用とフッ化物添加食塩による全身応用が行われています。市販されている歯磨剤の90%以上にフッ化物が配合されています。3~6歳児にはフッ化物イオン濃度500ppmの歯磨剤、6~12歳児には1.000ppmの歯磨剤、12歳から成人には1.450~1.500ppmのフッ化物配合歯磨剤を勧めています。フッ化物歯面塗布は歯科医師によって実施されています。フッ化物歯面塗布に使用するジェルやバーニッシュはフッ化物イオン濃度が5.000~12.000ppmと非常に高いので、歯科医院で使用されています。フッ化物添加食塩以外の錠剤や点滴剤などのフッ化物補助製品、水道水フロリデーションなどの全身応用は行われていません。また、一部の学校では健康教育、歯磨き指導、給食後の歯磨きタイムなど行われていますが、学校によって予防プログラムの内容は異なります。 

 ベラルーシの法律に基づいて、すべての子どもは3歳になると最初の歯科健診を受けます。3歳児の歯科健康診査は公立病院で行われます。健診でう蝕や不正咬合などが認められた場合はなるべく早く治療を受けるように指導します。問題がなければ、母親に口腔清掃や食生活について助言を行います。日本と同じように、保育園・幼稚園の園児、小学校の児童、中学校・高等学校の生徒および教職員を対象として、保育園・幼稚園や学校などで年1回歯科健診が行われます。一部の学校には歯科クリニックがありますが、通常は歯科疾患のある子どもは地域の公立病院かプライベートクリニックで治療を受けることになります。 

 公立病院で治療を受けた子どもの歯科疾患の中で、最も多いのがう蝕とその関連疾患です。治療内容としては、乳歯の抜歯が12.5%、永久歯の抜歯が1.7%を占めています。 

 

ベラルーシの口腔保健状況 

 ソビエト連邦からベラルーシ独立して医療保険改革を実施したときに、公立病院の更新とともにプライベートクリニックの設置も認められるようになりました。現在、歯科保健サービスのアクセスはよいと考えられいます。しかし、約20年間にわたる「う蝕と歯周病に対する全国予防プログラム」によって子どもの口腔保健状況は多少改善しましたが、また多くの問題が指摘されています。 

 歳児の乳歯のう蝕有病率は80%です。日本の歯科疾患実態調査(2011年)によると、6歳児の乳歯う蝕有病率は42%なので、乳歯のう蝕有病率はベラルーシの方が約2倍高い状況です。12歳児のDMFTも、ベラルーシは2,1歯(2008年)、日本は1.1歯(2012年)で、約2倍う蝕が多くみられます。 

 ベラルーシの公立病院では、国民全員が治療を無料で受けることができます。18歳以下の子どもは保存処置や抜歯だけでなくて、必要であれば補綴処置、口腔外科手術、矯正処置など、ほとんどの歯科治療が無料となっています。しかし、公立病院での待ち時間は長く、予約時間を自由に選ぶことができなので、プライベートクリニックにおける最新の歯科修復材やお洒落な雰囲気も魅力的です。プライベートクリニックでの歯科医療費医院によって異なりますが、最高価格は法律による制限があります。ベラルーシの自費治療は、日本の保険診療の費用とほほ同額です。たとえば、一般歯科医院での診察料:490円、歯科X線撮影口内法:210円、レジン修復:3.250~4.100円、感染根管処置単根管:5.700円、抜歯:1.660~3.200円です。 

  

まとめ 

 ベラルーシの保健医療制度は予防より治療を重視しています。初めての歯科健診は3歳児が対象ですが、そのときすでにう蝕を有しているので、歯科疾患を早期に発見し、早期治療を受けることは困難です。さらに、学校での健康教育の実施は法律による規定がないため、必須のプログラムとして組み入れられていません。こららの理由から。歯科疾患有病者の割合が高く、ベラルーシの子どもの口腔保健状況は他のヨーロッパの諸国と比較して良好な状況とはいえません。現在の制度を見直し、国民の歯科口腔保健を向上させていくことが必要だと考えられます。