世界の子どもの歯科事情⑩

こんにちは!宇都宮市みろ歯科受付鈴木です。

最近料理のケーキのライセンスを取得しました。ライセンスの取得のために最後の授業で作ったケーキです。

今回も世界の歯科事情の紹介です。今回はインドネシアについてお話しします。

インドネシアってどんな国? 

  正式名 インドネシア共和国 

  首都  ジャカルタ 

  国土  1.910.931㎢ 

  人口  約2.55億人(2015年インドネシア政府統計) 

  1人当たりGDP:3.876ドル 

  インドネシアは赤道付近に位置し、主要5党(ジャワ、カリマンタン、スマトラ、スラウェシ、ニューギニア)と約17.000以上の島々からなる群島国家で、面積は約189万 

と日本の約5倍の広さです。人口は約2億5.500万人(世界第4位)で、日本の約2倍です。約490の民族がそれぞれの多様な文化を継承しており、言語もインドネシア語以外に、583種類以上の言葉が使用されています。人口の87%はイスラム教徒であり、キリスト教11%、仏教は1%、ヒンドゥー教1%です。人口は都市部に集中し、ジャワ島には全人口の約60%が居住しています。日本はインドネシアの最大輸出相手国であり、また、国際協力機構(JICA)を通じて、インドネシアへの開発援助の主要な供与国となっています。 

 

〇インドネシアの医療提供体制 

 数多くの島々からなるインドネシアでは、全国に配置されたプライマリーヘルスセンターが初期医療提供機関として中心的な役割を担っています。ヘルスセンターは県または市の下にある郡レベルに少なくとも1か所設置され、2~3か所のサブセンターや村落レベルのステーションと連携して、総合的な保健対策や基本的医療サービスを提供しています。 

 ヘルスセンターで働いているのは、看護師(2012現在、1施設当たり平均11.31人)や助産師(同10.77人)が中心であるが、医師(同1.87人)、歯科医師(同0.72人)、薬剤師(同1.04人)なども配置されており、専門医(同0.02人)のいる施設もあります。また、全国にある9.655のヘルスセンター(人口10万あたりでは3.89施設)のうち、約1/3の3.317か所には簡単な入院設備も装備されています。(2013年現在)。 

 

 

インドネシアの公的医療保険制度 

  2014年1月より、新たな医療保険制度がスタートしました。これまでのインドネシアの公的医療保険制度は約60%の国民しかカバーしておらず、治療費用はほとんどが個人負担で支払われ、医療費の自己負担金額が高いことが大きな問題となっていました。2004年に国民全体を対象とした新たな社会保障制度を整備する「国家社会保障制度に関する法律第40号」が制定され、約10年をかけて制度実現に向けた検討が行われてきました。 

 2014年1月には、従来の各種制度を一元化するための統一的な実施機関として「医療保険実施機関(BPJSHealth)が設置され、BPJSを運営主体とする新しい医療保険制度が導入されました。この制度は制度は全国民(6か月以上インドネシアで働く外国人を含む)を対象とし、加入者は原則窓口負担なしで、疾病の予防・治療を含むすべての医療サービスを受けることができます。公務員や被雇用者は給与の5%が保険料で、低所得者、障がい者などは保険料が免除されます。実際に医療サービスを受ける場合は、まず登録された地域の1次医療施設を受診し、必要に応じて2次医療施設、3次医療施設へと紹介されて治療が行われます。 

 他の保険に加入している場合でも、この新しい医療保険制度に加入することが義務化されているので、これまで4割いた無保険者は理論上いなくなるとともに、制度間でバラツキがあった給付内容(自己負担の有無や保険が利用できる治療範囲の違いなど)も原則として統一され、医療サービスの不均衡の解消が期待されています。 

 なお、法律で定められた社会保障制度改革は、医療保険だけでなく、年金、労災保険、高齢者福祉など多岐にわたる社会保障を全国民へ提供することを目指しています。医療保険以外の改革については、今後、BPJS-Manpowerを設置して制度導入に向けた検討が開始される計画です。 

 

インドネシアの歯学教育 

  2013年現在の歯科医師は24.598名、歯科専門医は2.182名、デンタルナースは10.150名です。人口10万対の歯科医師数は9.9名である。歯科医師は都市に集中しており、分布には大きな格差が認められます。 

 歯科領域の専門医の種類は、矯正専門医、歯内療法専門医、小児歯科専門医、歯周病専門医、補綴専門医、口腔外科専門医、口腔診断専門医の7種類で、インドネシア大学を含む7大学で専門医養成プログラムが提供されています。 

 

〇インドネシアの歯科保健医療サービス 

  医療サービスと同様に、一般的な歯科医療サービスは公的なヘルスセンターや民間の歯科診療所などの1次医療機関から、専門医のいる2次医療機関、3次医療機関へと患者は紹介されます。インドネシアの医療保険制度は日本のようなフリーアクセスではなく、一次医療機関である保健センターなどがゲートキーパーの役割を担っています。したがって、一次医療機関の受診とそこからの紹介がなければ、高次医療機関である病院とである病院を受診することは出来ません。しかし、現在のところ、新しい医療保険制度が十分浸透していないため、2次医療機関、3次医療機関を直接受診する患者も多いそうです。 

 医療保険で行える歯科治療の項目は、予防処置、基本的な保存治療、スケーリング・ルートプレーニング、抜歯、緊急治療で、補綴治療は保険がカバーされていません。 

 

〇インドネシアの地域歯科保健事業 

 インドネシアでは乳幼児や学童を対象とした口腔保健プログラムがいくつか実施されていますが、それらは法律に基づき、全国的な規模で実施されているわけではありません。ヘルスセンターの歯科医師・デンタルナースなどによる公的な口腔保健プログラムは少なく、歯科大学や歯科学生が主体となる活動、地域の歯科医師によるボランティア活動、民間企業による活動がほとんどです。 

 また、村レベルで実施されるプログラムに、歯科学生に地域のボランティアが参加して一緒に活動を行う場合も多くあります。その例として、妊産婦および乳幼児を対象とした母子保健活動、学童を対象とした学校保健活動、高齢者を対象とした活動が挙げられます。 

 

〇インドネシアの口腔保健状況 

 インドネシアの首都ジャカルタとその周辺都市に在住する5歳児、12歳児を対象とした歯科保健調査(2014年)の結果を表に示しました。 

 

人数 

う蝕有病率 

dt/DT 

mt/MT 

ft/FT 

dmft/DMFT 

5歳児(乳歯) 

390 

90% 

6.8 

0.7 

<0.1 

7.5 

12歳児(永久歯) 

458 

84% 

2.9 

0.1 

<0.1 

3.2 

乳児も永久歯もう蝕有病率は高く、う歯数も多くなっています。う歯の中で処置歯は0.1歯以下で、90%以上が未処置歯です。新しい保険制度が導入されたことで治療率の向上が期待されますが、歯科医師数はまだまだ不十分です。インドネシア国民の一人あたり年間砂糖消費量は17㎏(2010年)とそれほど高くはありませんが、村落あちこちに甘いお菓子を売る店があり、子どもたちに対する間食指導も必要と思われました。 

 

 

〇インドネシアのう蝕予防プログラム 

 インドネシアには多くの火山が存在しますが、カリマンタン(ボルネオ島)には火山はありません。1980年代後半にインドネシアで行われた飲料水のフッ化物濃度に関する調査では、ボルネオのほとんどの地域の水源は、非常に低いフッ化物濃度でした。そこで2000年前半、南カリマンタン政府は飲料水へのフロリデーションプログラムを開始しましたが、その後予算不足のため中止しました。 

 インドネシアで最も普及しているう蝕予防法は、フッ化物配合歯磨剤を使用して毎日歯を磨くことです。市販されている歯磨剤の90%以上にフッ化物が配合され、フッ化物含有量は1.000~1.600ppmであり、また遊離フッ化物イオン濃度は338~995ppmとなっています。インドネシア保健省と歯磨剤メーカーは、朝食後と就寝前の2回、2分間歯磨きをすることを推奨しています。 

 

〇まとめ 

  インドネシアでは、ヘルスセンターの歯科医師などによって口腔保健プログラムが提供されていますが、全国規模での実施ではありません。地域によっては、ヘルスセンターのスタッフが住民ボランティアと協力して、口腔保健活動に積極的に取り組んでいるところもあります。今後は、保健活動の全国的な実施を目指した取組みが必要と思われます。