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結婚式に間に合わなかった話~プロポーズから矯正への物語

今から十数年前、男は人生をかけた一世一代のプロポーズを決行しました。
クリスマスの夜に、ギターの弾き語りでサザンの「いとしのエリー」を奏でたのです。
もちろんのエリーの所を当時の彼女の名前にかえて。
そして歌い終わるとおもむろにポケットから小さな箱を取り出して、ひざまずいて、パカッ。指輪キラリ。
結果、当時の彼女は現在その男の妻となっています。つまり、プロポーズは成功したのでした。

こんにちは。みろ歯科院長の彌勒寺です。前述のプロポーズ男は私です(笑)。
当時なぜギターの弾き語りで勝負しようと思ったのか、今となっては全くの謎です。
なぜならそれまでギターの経験はゼロだったからです。
なので、クリスマスの3か月前から、当時住んでいた東京の高田馬場駅近くのギター教室に通いはじめ、そこの先生に事情を説明し、
楽譜とか読めなくていいからとにかくクリスマスまでに形にしてくれと頼みこみました。
結果はうまくいきましたが、今思えばこの短期間での成功体験が後の矯正事件の入り口でした。

さて、プロポーズ成功後、結婚式まで大体1年位期間があると知ります。

「結婚式=写真に残る一生の思い出=笑顔=歯の白さと歯並び」

ということで、歯列矯正をしようと考えました。
とはいえ、元々ガチャガチャな歯並びというわけではなく、下顎の前歯の1本がちょっとだけねじれて重なってる程度なので、
すぐ終わるだろうと思いました。まあ1年もあれば余裕だろうと。
そこで大学の部活の先輩(水泳部)で今でも仲良くしていただいている矯正専門医の先生にところに軽~い気持ちで相談しにいきました。
「先輩、前歯だけチャッチャと治してほしいんですけど~」

さあ、ここからが事件の始まりでした。
普段はめっちゃ温厚で面倒見の良い先輩がいきなりキレ気味のトーンで、
「お前、矯正ナメてない?前歯だけなんてあり得へんやろ?」
「えっと…(ん、これはヤバいかも)」
「まず奥歯のかみ合わせやろ?不正咬合の分類もまず奥歯からって国家試験で習ったやろ?」
「はい…(確実にヤバい。このトーンは文化祭の当番サボって怒られた時よりヤバい)」
「それをお前、矯正専門医になるために大学卒業後、大学院まで出て、10年かけて博士号とった俺に、もう矯正に人生捧げてる俺に、奥歯のかみ合わせは治さんと前歯だけの治療をやれと?」
「いや、そういうことでは…」

「よし、ほなもう俺が矯正の真髄っちゅーもんを君の歯に直接教えてあげたるわ。治療費は勉強代だと思ってちゃんと払うてね」
「Y、Yes、sir!」(マジか!)
当時の体育会系部活の返事は「ハイっ!」の一択なのでした。

結果、幸い抜歯は必要なかったものの、上下全顎ワイヤー装置のフル矯正開始。

当時僕はインプラント認定医目指して、寝ても覚めてもインプラントのことばっかり考えているインプラント漬けの生活で、
矯正については国家試験合格後はノータッチでしたが、さすがに
「これ1年で終わるわけないよね…」
ということはわかっていました。

そしてあっという間に結婚式。当然矯正治療は半分も終わらず。
結婚式の時だけ矯正装置を外すこともできましたが、先輩に、
「装置外してもええけど、その間は後戻りするからそのままでよろしんちゃう?」
「そもそも皆花嫁のことしかみてへんから。君の歯のことなんてだーれも気にしないから大丈夫や。」
と励まされ(!?)、もちろん返事は「Yes、sir!」なのでした。
幸い妻も、妻の父も、歯科医師で理解があったので、矯正装置はそのままでOKとなりました。
ちなみに先輩の言う通り、結婚式は完全に花嫁の晴れ舞台でした(笑)。

こちらがその証拠写真です(笑)

それから約2年が過ぎ、やっと装置を外す日がきました。

最初のうちは通うたびに毎回必ず矯正用語についての質問攻めが来て、

「まずニッケルチタンのラウンドワイヤーでレベリングがどうのこうの…」
「ハイっ!」(それなんだったっけ?)
「レクタンギュラーのオメガとクロージングのループがどうのこうの…」
「ハイっ!」(何語や?わからへん)
「じゃあSpeeの彎曲について説明してみ」
「…次回までの宿題でお願いします!」

正直毎回通うのが憂鬱でしたが、3年間で多くのことを学び、
また先輩の歯科医院の実際の患者さんへの治療も見学させていただき、
さらに自分自身が矯正治療を体験することで患者さんの不安や気持ちの変化もわかり、
非常に勉強になったと今ではとても感謝しています。

そして改めて餅は餅屋、矯正だけをずっとやり続けている矯正専門医には敵わないとも思い、
自分が一般歯科として開業した後は、矯正希望の患者さんは全て専門医へ紹介していました。

ただやっぱり、矯正治療は当然保険のきかない自費診療ですから、受けられる患者さんはある程度時間もお金も余裕がある方に限られる、というのも事実です。
成人の場合、ざっくり言うと、歯4本抜いて、150万円位払って、3年間は通い続けられることができる方です。

うちの医院にいらして、矯正専門医を紹介しても、そのハードルが越えられないことが多々あります。
そしてある時、子どもの時から10年以上定期健診で通い続けてくれて、来年結婚式を控えた患者さんからこう言われました。

「矯正専門の先生の説明はわかりました。」
「ただ先生、もうちょっと何とかなりませんか?」
「結婚式は来年なのに、終わるのが2年も3年もあとじゃ意味がないんです」
「あと、私はこれからもずっと先生にみてほしいんです!」

それを聞いて「何とかしてあげたい!」と強く思いました。
他にも一般的に矯正専門医は矯正治療のみを行うため、矯正治療前に必要な抜歯、その後のむし歯や歯周病の管理は行わず、何かあるたびに患者さんは矯正専門医院と当院を行ったり来たりしなければならなかったため、その煩わしさに様々な意見が寄せられ、またそれが原因で治療が遅れる事もありました。
また当院は「予防とインプラントに特化した歯科医院」を掲げてインプラント治療に積極的に取り組んでいたため、インプラント埋入前に歯の移動ができればもっといい治療ができるのに、とも感じていました。
そこで自分自身の矯正治療を受けた経験を何とか一般の歯科診療に組み込んで、もうちょっと多くの方の手の届く範囲でできないものか、いやむしろそうすべきなんじゃないか、という使命感のような気持ちが沸々とわいてきました。

それからは矯正の勉強会やセミナー、講習会に通いつめ、様々な流派の技術を学び、各矯正歯科メーカーの特徴も調べ上げ、
ついに治療期間、費用、仕上がりの全てに納得のいく方法に出会い、習得しました。

それが透明マウスピース矯正の「インビザライン」です。

この矯正治療の方法は、ワイヤーを使ったフル矯正で完璧さを追求する矯正専門医に言わせればやや軽い治療かもしれませんが、
正確性、利便性、治療期間の短さ、費用の安さを考慮すれば、多くの患者さんの治療の選択肢に入ると私は確信しています。

そう確信できる理由は、あらゆる矯正方法の中で1番自分自身にやってみたいと思った方法であり、そして実際に自分の歯を再度自分で矯正してみたからです。
その後のことは後述しますので、まず先に透明マウスピース矯正の「インビザライン」の特徴をお伝えします。

透明マウスピース矯正の「インビザライン」の特に素晴らしいと思う点

①正確性

治療前の歯並びをスキャニングし、3Dモデルを使ってパソコン上で治療中の歯の動きを予測、再現できます。
つまり、いつ頃にどういう状態になっているか途中経過を1週間単位で見ることができ、さらに最後はいつ、どういう仕上がりになるのか、
治療前に全てみることができるので、患者さんと一緒に直接確認し、OKを頂いてから安心して治療がスタートできます。
また歯の動きの予測は世界中の600万人以上のデータから最適解を計算し導かれます(ドクターの手技の熟練度に左右されない)ので、質の良い治療が約束されます。
世の中には他にもマウスピース矯正のメーカーはあるのですが、ここまで予測再現ができるものはありません。

②利便性

なんといっても、透明な上に、取り外すことができます。そのため、例えば結婚式の時は、悩むことなく外せばOKです。
また、取り外せるので、歯磨きも簡単。むし歯になるリスクも圧倒的に少ないです。

③治療期間の短さ

症例にもよりますが、結果的にワイヤーを使ったフル矯正と比べて2/3位になることが多いです。 ただそれよりも、いつ終わるのかがはっきりしているので、モチベーションが保てて頑張れるし楽しい、という感想が多いです。

④費用の安さ

矯正治療は自由診療(保険外)なので価格設定は各医院によって異なります。
ただ私は前述したような気持ちで、この良い矯正治療を一般に広めたいという思いがあるので、
他のどの医院よりも確実にローコストであるように設定しました。(仲良しの矯正専門医の先生からは迷惑だと言われますが^^;)

⑤抜歯をしなくていいことが多く、痛みも少ない

代わりに歯と歯の間に細い隙間を作る必要はありますが、抜歯をしなくて済む可能性は高いことが多いです。
その結果、痛みを伴うことが少なくなります。

このように素晴らしい点は多い治療方法ですが、残念ながら欠点もあります。
まず、全ての症例に適応できるわけではありません。特に骨格的に問題がある場合はマウスピース矯正では治りません。
また、抜歯を伴う症例はワイヤー矯正の方が早く終わる事もあります。
だた、できない場合は「できません」と最初にはっきりとお伝えしますので、その点はご安心下さい。
そして、1番重要なことは、患者さんの協力が欠かせない、ということです。
特にマウスピースを外している時間が長いと、歯とマウスピースのズレが生じ、マウスピースが入らなくなるので、作り直しが必要になります。
当院では再製の費用は一切頂いておりませんが、もう1度型取りが必要になるため、治療完了までの期間が延びます。

実は最初はワイヤーのフル矯正の患者経験者として、「本当にマウスピースなんかで矯正できるの?」と疑っていました。
それから様々な臨床症例を見ていくうちに「これは大丈夫なのかもしれない」と思い、ただいきなり私の患者さんに行うのはやはりちょっと心配だったので、
前述したとおり、まずは実際に自分自身の口で試してみました。(透明マウスピース矯正ならではのセルフ矯正です。自分で自分の歯にワイヤー矯正は取り付けることができません。)
そのころ治療や定期検診などで普通に来院されていた患者さんにはあえて言いませんでしたが、診療中も毎日ずっとマウスピースをつけていたものの、全然問題ありませんでした。
また余談ですが、宮古島トライアスロン大会(水泳3km自転車157kmマラソン42.2km)の間もずっとつけていましたが、それも全然問題ありませんでした。
その結果、「これは良い!」と確信し、次に歯科医師である妻、そして小学生の我が子2人もこの透明マウスピース矯正をはじめ、さらに当院スタッフの勤務歯科医師、歯科衛生士も希望者がおり、現在透明マウスピース矯正の「インビザライン」を使用しています。
なお、我が子に関しては、以前寝てるときにくわえるタイプの矯正装置を使用しましたが、結局寝苦しいということで自分でペッと吐き出してしまい、うまくいきませんでしたが、
今回のインビザラインに関しては歯に装着するものなので全く問題なく使えて、歯並びも順調に治っています。
他にもスタッフからは、ディズニーランドに行った時に食べ歩きしても外せるので気にならなかった、誕生日に彼氏とレストランで外食した時も外せるので問題なかった、など実生活に則した利便性を評価する声が多く聞かれます。

まとめ

透明マウスピース矯正「インビザライン」が特におすすめな方

  • 過去に矯正をして、現在少し後戻りが気になる方
  • 前歯がちょっとかさなっていて気になる方
  • 今まで実は歯並びが気になっていたものの、金額や見た目のことであきらめていた方

最後に、あと1歩矯正に踏み切るかどうか迷っている方へ、参考になる統計的なデータをお伝えします。

厚生労働省のデータによると日本人の不正咬合のうち約半分は歯の重なりで、矯正治療を行なった方は皆さんそれを治しています。わざわざ治すまでもないかな、という位の歯のかさなりを治すことがほとんどで、骨格を治すような劇的な矯正を行うことは極僅かといのが現実です。

そして日本矯正歯科学会のデータでは、8020達成者(80歳で20本の歯がある)のうち、反対咬合(噛んだ時に下の歯が上の歯より前にある状態)と、開咬(噛んだ時に奥歯しか噛み合わず前歯があいている状態)の方は、0%、つまり1人もいませんでした。おそらく反対咬合と開咬の場合、前歯があたらないのでどうしても奥歯の負担が多すぎてしまい、長期的に見るとまず奥歯がダメになってしまい、そして咬合が崩壊してしまうという事が考えられます。

実際訪問歯科の現場に行くとほとんどの方は入れ歯で、食事も流動食やミキサー食の方は多く見られるのが現実です。健康な歯があってこそ健康な体が成り立ちます。死ぬ直前まで好きなものを好きなだけ食べたい、そのためには歯が必要なのです。
よく高齢者の歯が抜けたりして噛む力が弱まり、消化器官の働きが衰えてドミノ倒しのように体力が低下していく言われていますが、まさしく歯の不健康がきっかけになっています。
平均寿命は長くなっている一方、健康寿命(支援や介護の必要がなく健康な状態で日常生活が送れる期間)との差が男性で約9年、女性で約13年もあり、いかに自立して健康でいられるかが社会問題になっています。
また歯が20本以上残っている人はほとんど残っていない人と比べて年間にかかるの総医療費が約18万円も違うというデータもあります。

むし歯や歯周病の予防はもちろんですが、今矯正治療を行っておくことで、将来歯を失うリスクをさらに予防できる、ひいては健康で長生きできる=健康寿命の延伸のために、自分への投資として矯正治療を行うことは、ただ歯並びを整える以上に人生の価値の向上につながると確信しています。

終わりに
ここまで長文お読みいただきありがとうございました。歯並びについてのお悩みが少しでも解決されることを願っていますし、またご家族やご友人にお伝えいただきお役に立てれば幸いです。