3Mix-MP法

従来の治療法では、虫歯が大きいと歯の神経の治療をする必要がありました。歯の神経の治療は痛みがでやすく、治療回数がかかるだけでなく、歯の神経を取った歯は弱くなり、歯が折れたり、歯の根の先に膿がたまってしまうこともあります。

3Mix-MP法(すりーみっくすえむぴーほう)は、3種類の薬剤を虫歯の上に置き、歯を無菌化します。痛みが少なく、治療回数も少なく、歯の神経の治療が必要ないという特徴があります。

3Mix-MP法™の利点

・治療の痛みが少ない。
・歯の神経(歯髄)を残すことができます。
・歯を削る量を少なくできます。
・治療費が安く、治療回数が少なく済みます。
・歯を健康に長持ちさせることができます。

3Mix-MP法™の欠点

・薬剤(抗生物質)を歯に残したままになります。
・後から痛みがでることがまれにあります。
・使用に反対する歯科医師もいます。
・虫歯によっては適応にならないことがあります。

※3Mixの開発者であり新潟大学名誉教授、日本歯科大学客員教授である岩久正明先生は、自身のホームページの中で、マスメディアは3Mixを夢の治療法のように報道しているが、痛くなく・歯を削らない虫歯治療は存在しないこと、虫歯になってから歯科医院で3Mixを使用するよりも、虫歯にならないために自宅や歯科医院で予防をおこなうことが大切だとしています。

3Mix-MP法™の治療方法

  1. 歯の神経の近くまで達した大きな虫歯があります。通常の治療方法では、虫歯を取るには歯の神経も取らなければなりません。
  2. 虫歯をある程度取ります。歯の神経近くの虫歯はわざと残します。
  3. 虫歯のうえを覆うように3Mix‐MPをのせます。虫歯菌は無菌化され、虫歯が進行することはなくなります。
  4. 金属などのつめ物をして治療は終了です。

読売新聞  薬で細菌死滅 歯髄残す(2005年9月24日)

鎌田裕貴さん仙台市太白区の整体師鎌田裕貴さん(29)は、右上の奥歯の痛みで、夜も眠れなかった。10代のころに治療した虫歯が再発したようだ。
「歯を抜かれて入れ歯になるのは避けたい」と考えていた鎌田さんは、歯をできるだけ残して治療できると聞いた同市泉区のタクシゲ歯科医院を訪ねた。
虫歯は、神経のある歯髄(しずい)にまで達していた。通常、虫歯の治療は、細菌に感染した部分を取り除き、金属などを詰めたり、かぶせたりする。歯髄が炎症を起こしている場合は、痛みを取るために歯髄を抜き取らざるを得ないことがある。

鎌田さんは、虫歯に薬を塗り、詰める治療を受け、歯髄も残すことができた。痛みは、その日のうちに治まった。この治療は「3Mix‐MP法」と言う。
院長の宅重豊彦さん(59)が、新潟大教授星野悦郎さんの指導で、約20年前から研究を続けてきた。「歯をできるだけ削らず、歯髄を守る治療法」と説明する。

虫歯の原因になる細菌を死滅させる3種類の抗菌薬を混ぜ合わせているため、3Mixと呼ばれる。歯科医の間では以前から知られていたが、宅重さんらは、薬の浸透性を良くするため、軟膏(なんこう)のマクロゴール(M)とプロピレングリコール(P)を加え、ペースト状に加工することで、飛躍的に効果を高めた。
感染した部分をきれいに取り除くのが、虫歯治療の原則だ。しかし、歯の奥は細い管を束ねたような構造になっていて、ここに潜む細菌を取り残すことがあり、虫歯再発の原因になる。この方法では、抗菌薬を歯全体に浸透させるため、菌の取り残しを心配する必要はないという。

また、宅重さんは「MPには神経を保護する作用があるので、鎮痛薬を使わなくても、痛みがとれる」と効果を語る。
歯髄を残すのが難しい進行した状態でも、歯髄が残せる治療。宅重さんは、歯科医を対象にした講習会を各地で開き、普及に努めている。試みる歯科医師は増えているが、標準的な治療法として定着しているわけではない。

「抗菌薬を使わなくても、歯髄を守ることができるケースは多い」「3種類の薬を歯科医が自分で混ぜ合わせるなど薬の扱いに手間がかかる」――などの声があるほか、使用する抗菌薬が虫歯治療用に認められていない、という問題もある。
しかし、「3Mix‐MP法」の効果を実感している患者は増えている。歯科界での位置づけを明確にしてもらいたい。