虫歯があるのに治療をしないのはなぜでしょう?

虫歯治療の新しい考え方

「この虫歯は治療しなくても大丈夫です」といわれても、「せっかく来たのに虫歯の治療をしないなんて」、「虫歯を治療しないで大丈夫なの?」と思われた方も多いと思います。
つい最近までの歯科治療は、どんなに小さな虫歯でも削って治すのが当たり前でした。ところが、削ってつめた金属やプラスチックのつめ物はその後どうなったでしょうか?

私(院長)自身は8歳で奥歯に銀歯を入れましたが、12年後に虫歯になって取れました。歯科大学の学生でしたので、高名な先生に治療をお願いして、今度は銀歯よりも虫歯になりにくいといわれている金歯を入れてもらいましたが、これもまた8年後に取れました。
私に限ったことではなく、虫歯になったことのある方ならば、ほとんどの方がこういったことを経験していると思います。

つめ物の耐用年数は、プラスチックのつめ物(コンポジットレジン)と部分的な金属のつめ物(インレー)は約5年、歯を金属で覆いかぶせたもの(クラウン)は約7年といわれています。当クリニックで入れさせていただいたつめ物はここまで短くはありませんが、いずれは寿命がきます。

予防措置で歯の寿命は確実に延びる

治療をしてしまった歯は、何も治療していない歯に比べると虫歯になりやすいのです。一度でも治療をしてしまうと、生涯にわたって「歯を削る→治す→歯を削る→治す」というサイクルに入っていきます。治療のたびに歯はなくなっていき、やがて抜歯に至ります。

歯を残すのにはどうすればよいか。それは予防処置をおこない虫歯にしないことです。歯みがきをしっかりおこない、食生活に注意して、日常の歯みがきでは取りきれなかった汚れや歯石を歯科医院で3~6ヶ月毎に取ってもらうのです。
日本では痛くなってから歯科医院に行くのが普通ですが、虫歯の少ない国では、国民の大半が虫歯にならないために、自宅だけでなく歯科医院でも予防処置をおこなっています。定期検診をおこない、定期的に歯科医院で予防処置をおこなうと確実に歯の寿命は延びるのです。

予防処置によって虫歯が治っていくこともある

不幸にして虫歯になってしまった場合はどうすればよいのでしょうか。大きな虫歯や小さくても歯の内面まで達している進行性の虫歯(象牙質虫歯)は、残念ながら治療をおこなわなければなりません。
しかし、最近の研究により、歯の内面まで達している虫歯(象牙質虫歯)でも、虫歯の進行がゆっくりであったり、進行が止まっている場合は、自宅と歯科医院での予防処置をおこなっていけば、虫歯が進行しないことがわかりました。さらに、表在性の虫歯(エナメル質虫歯)は、予防処置によって虫歯が治っていくこともあるのです。それが今回あなたのお口の中にあった虫歯です。

この概念はミニマムインターベーション(最小限の侵襲)といわれ、2000年に国際歯科連盟(世界の歯科医師会)によって提唱された新しい概念です。日本の歯科医院にも徐々に広まりつつある新しい考え方です。まとめますと次の通りです。

  • 歯はなるべく削らない。一度でも削ると、歯の寿命は短くなる。
  • 虫歯にしないためには、自宅と歯科医院での予防処置が大切。
  • 歯の内面まで達している虫歯(象牙質虫歯)でも、虫歯の進行がゆっくりであったり、進行が止まっている虫歯であれば、歯を削らずに予防処置によって進行を止めることができる。
  • 表在性の虫歯(エナメル質虫歯)は予防処置によって虫歯が治ることもある。

以上です。ご理解いただけたでしょうか。ご不明な点などがありましたらお気軽にスタッフにお聞きください。