小児の歯列不正の原因について

こんにちは、みろ歯科歯科衛生士の石黒です。
9月の最終週にもなり、気温も下がってきてだんだん秋らしくなってきましたね!今年はコロナの影響で外出があまりできない日々が続いていますが、紅葉を観に行きたいものです^_^
さて、今回は小児の歯列不正の原因についてお話ししていきたいと思います。内容は口腔習癖など機能的要素について取り上げていきたいと思います。
〜口腔機能と周囲の形態は密接に関係している〜
呼吸、嚥下、咀嚼、発音、などの口腔機能は人間が生きていく上で必須のものであり、これらの口腔機能による動作が口腔周囲の環境や歯列などの形態をつくります。
口腔機能と周囲の形態には密接な相関関係があり、歯列形態に解剖的な問題がなく、口腔機能が正常であれば、口腔内は正常に発育します。
ところが、口腔機能に問題(口腔習癖)があると、その影響で歯列形態に問題が出てきてしまいます。
まだ、形態に問題があるとそれにより口腔機能を正常に保つことが難しくなり、口腔習癖が誘発され、悪循環ぎ発生してしまうこともあります。
バランスよく口腔周囲を機能させているかチェックし、できていなければ、原因となる口腔習癖や悪い生活習慣、その他の形態の問題などを検査して、それに対した機能訓練を行う必要があります。
口腔習癖とは、「歯列形態に悪影響を及ぼす口腔周囲の異常機能」のことをいい、指しゃぶりや口呼吸、異常嚥下癖、構音障害、口唇閉鎖不全、弄舌癖、クレンチング、偏咀嚼、咬唇癖などさまざまな種類があげられます。
それぞれの習癖により対応が異なってくるため、それらの一つひとつの仕組みを理解していることが解決につながります。
今回は、さまざまな口腔習癖と舌癖を引き起こす形態の問題である舌小帯強直症について説明していきます。
〜指しゃぶり〜
指しゃぶりは歯並びに悪影響を与える可能性がある
指しゃぶりは、赤ちゃんがおなかの中にいる頃から行っていると言われています。
生まれてすぐに母乳を飲めるようになるための練習と言われており、発達の過程で必須の行為です。
赤ちゃんには、口に近づいた物を吸う「吸啜反射」という原始反射があります。生後2〜3ヵ月ぐらいにかり手の動きが活発になると、近づけた手を吸啜反射で吸うという指しゃぶりが始まります。
指しゃぶりは発達段階において自然な行為ですが、1歳半から2歳頃を過ぎてもやめられない子どももいます。
2歳半を過ぎても続いてしまうと、歯並びやあごの骨等に悪影響が残る可能性があります。
具体的な影響としては、上下の前歯が接触しない状態である「開咬」とともに上のあごの骨が前方に突き出てしまったり、ときに斜めから指を入れて吸っている場合は、下あごが押されて真ん中からずへてしまうこともあります。
指しゃぶりは、不安があったり緊張しているときに心の安定を図るためにすると言われており、歯科医院来院時のような時は特に多くなるものです。
怒ったりして無理にやめさせるのではなく、自然な形で卒業できるように仕向けることが重要です。
特に夜の指しゃぶりは最後まで残ることが多く、その場合は親御さんがしゃぶる手をつなぎながら安心して寝かせてあげることをおすすめしています。
指しゃぶりの卒業の仕方は子どもによってさまざまです。
焦らずに一緒にお子さんにあった方法を探していきましょう。
︎おしゃぶりvs指しゃぶり
「指しゃぶりは歯列に影響があるため代わりにおしゃぶりを」という話も聞きますが、どちらも一長一短です。
おしゃぶりは指に比べて柔らかいため歯列に影響は起きにくい、まっすぐ咥えるあて正中のずれは起こりにくい、鼻呼吸を促す効果があるなどのメリットがあるともいわれています。
一方で、親子ともども依存しやすい、泣き止まないときなどに使われるため親子のコミュニケーションが減る、口にいろいろな物を入れて確かめるという行為が減って学習の機会が減る、などもいわれています。
いずれにしても2歳半を過ぎての習慣は、歯列、咬み合わせに悪影響が出てしまいます。
お子さんが自然に頻度を減らしていけるように、叱るのではなく、周囲の大人が、子供とのふれあいを増やし、お子さんが安心して何かに夢中になれる環境を作ってあげることが大事だと思います。
〜舌癖〜
舌癖は開咬の原因となる
上下のあいているスペースに歯を突っ込む「舌突出癖」、飲み込み時に舌の先が上下前歯の間や下あごの前歯の後ろにある「異常嚥下癖」、サ行・タ行などの発音時に舌を挟み込んでしゃべる「構音障害」、歯の隙間や欠けてしまった歯などが気になり、触って舌を動かして遊んでしまう「弄舌癖」などを合わせて「舌癖」と総称します。
いずれも、舌の位置が低くなり上あごに挙がってない状態で、下がった舌を前歯の間に挟み込むことで、咬んでいても前歯があたらないような開咬という状態になってしまいます。
︎低位舌
舌突出癖、異常嚥下癖、構音障害、弄舌癖などの「舌癖」や、口呼吸、または舌小帯強直症などの影響で引き起こされる、舌が口蓋に持ち上がらない状態を「低位舌」といいます。
舌の本来の位置は上顎前歯の付け根付近の「スポット」と呼ばれる丸い膨らみに舌尖が収まり、舌全体が口蓋に挙上している状態です。
ところが、舌癖で舌を下前方に押しつけたり、口呼吸で空気の通り道を確保するために舌が下がってしまったり、舌小帯強直症で舌小帯が張ってしまうことで物理的に舌の挙上を妨げることなどが原因で、低位舌の状態になります。
低位舌になり、上下前歯の間に舌が下がってしまうと、それに押されて歯列は開咬になります。
また、本来舌が上顎にあれば舌の圧力によって拡がるはずだった上顎が拡がらず上顎劣成長、舌が下顎にあることにより舌の圧力で下顎が拡がってしまう下顎過成長をともなうこともあります。
舌が口蓋に挙上できていないということは、舌を挙げておく筋力が発達していない「舌の姿勢が悪い状態」であるといえます。
このような場合、口輪筋に緩みがあったり、口腔周囲全体の筋力も弱い傾向にあります。
普段姿勢の悪い人が姿勢を良く保つのが大変であるのと同様に、舌が低位にある「舌の姿勢が悪い人」が舌を挙上し舌の姿勢を良く保つのは大変です。
姿勢を良くするために体幹の筋肉を鍛えるように、舌の姿勢を良くするためには口腔周筋機能療法などで舌の筋トレ、口腔周囲筋の筋トレをする必要があります。
さて今回はここまでとしたいと思います。
次回は、残り5つの口腔習癖について説明していきたいと思います。楽しみにお待ちください(^_^)