噛まなくなった現代人

こんにちは!宇都宮市みろ歯科 歯科衛生士の中島です。

いきなりですが、時代の変化とともに食事の際に私達が咀嚼をする回数はどんどん減っているといわれています。

まずはその背景やその結果、何が起きているのかを知ってみましょう。

ボタンカレーは飲み物?!
時短で食事が済まされることが多くなった現代社会。忙しさにかこつけて空腹を満たすだけの食事が横行しているようですが、それとなくエネルギーを摂取するだけの食習慣になってはいないでしょうか?仕事、家事、育児に追われて忙しい日々を過ごしている現代人にはそれは何の変哲もない日常の習慣なのかもしれません。しかし時代に追われて、早食いになると咀嚼の回数が顕著に減少するため、食べ物を歯で噛み砕き、舌で唾液と混和して十分に食塊を形成しないまま飲み込むようになります。さらに時間がないからといって早食いに適した食事メニューを選択すればそもそも咀嚼する必要がありません。例えばカレーライスや麺類、お茶漬け、雑炊などはそれほど噛まなくても飲み込めてしまいます。特に麺類はあえて噛まずに喉越しを感じたいという人さえいます。食べ方が問題なのか選択する食形態が問題なのか、いささかややこしい話になりますが、いずれにしても人間の食べ方は小さい頃からの食習慣とそれに伴う口腔機能の発達が影響しています。特に幼少時より成長の過程ではほとんど噛まなくて良い食事が習慣化するといわゆる「流し込み食べ」という食べ方が身についてしまいます。食べ物を捕食した後、神ながらお茶やジュースで飲み込んでしまう食べ方です。学校給食の現場でも問題になっており、給食を牛乳で流し込んで食べる子供たちが増えているといいます。どうやら普段の食生活と食べ方には密な関係があるようです。

ボタン平均620回?
平均620回(咀嚼時間11分)、この数値が何を意味するかご存じでしょうか?答えは現在日本人が一食当たりに要する咀嚼回数です。数字だけ見ても多いのか少ないのか今ひとつピンと来ないと思いますが、昭和初期には平均1420回(22分)咀嚼していたと言われているため、なんと半分以下に減っていることが分かります。さらに時代をさかのぼると、江戸時代は平均1465回(22分)、鎌倉自体は2654回(29分)、弥生時代においては平均3990回(51分)と報告されています。歴史的に見ても日本人の咀嚼回数は減ってきていることが分かります。

ボタン柔らかいもの噛まずに食べられるもので溢れている現代
これほどまで咀嚼回数が減った要因をひとつとして食生活の変化や食品の加工技術の進歩が挙げられます。弥生時代の食生活を見ると玄米のおこわや乾燥した木の実干物など、固くて噛みごたえのある食材で構成されることが多かったようです。江戸時代では、庶民はせいぜい一日に一度しか米を炊かず、現代のように保温もできないためほとんどの場合硬い冷や飯を食べるしかありませんでした。おかずも目指しや沢庵などが多く全体的に硬いものをよくかんで食べていたと推察されます。その後明治時代には、文明開化と共に食肉文化や洋食文化が都市部を中心に浸透し、調理法の改良も進み、柔らかいものを食べる機会が増え始めます。さらに戦後の昭和時代半ばなると食の欧米化や調理器具の発達、加工食品の開発によって現代人の好むハンバーグやスパゲッティを始め、レトルト食品など、あまり噛まなくても食べることができるメニューが日常の食卓に並ぶようになります。社会の変化と共に、食生活の変化が急激に加速し、人類は進化の過程で食べるために咀嚼をさほど必要としない食文化を構築することになりました。

ボタン噛まなくなったことで、形態・機能にも影響が出ている
そして、最近では「飲む〇〇」と入った食品をよく耳にします。時間がなくても手軽に空腹を満たせる食品として働き盛りの若年層を中心に人気があります。エネルギーも栄養も全てが飲料、あるいはゼリー状剤として飲み込むことで食事の時間ロスをなくそうという発想でコマーシャルされています。
これらの商品こそ咀嚼を必要としない究極の食事(嚥下食)です。嚥下食は脳血管障害の後遺症なのでうまく噛めない人が代替として摂取する補助栄養や介護職の位置付けであれば納得できますが、噛める人が噛まずして飲み込むだけの食習慣として定着すると知らないうちに咀嚼機能が退化していくのは当然のことと言えます。
こうした習慣によって顎は十分に発育せず、生じた顎の発育不全が次の世代に継承されていきます。その結果現代人では骨格は華奢で細長い願望となり虚弱化した口腔の形態的ならびに機能的な異常が増えているのです。噛まない食習慣が続いた成れの果ては、宇宙人の願望をイメージしてしまいますね…

以上のことからも、現代は噛むこと(回数や時間)が減少しているということがよく分かります。
私も振り返ってみると、早食いだったり、流し込み食べをしていることがありました。

では、噛む意義は何でしょうか???
なんのために噛んでいるのでしょうか。これが分かると、歯をもっと大切にし、噛んでみようと思うはずです。

噛む意義については、次回の更新をお楽しみに(^_^)/~~!