根面う蝕について

こんにちは、みろ歯科 歯科衛生士の石黒です!
最近暑かったり寒かったりと気温の変化が激しいですが、皆さんは体調を崩していませんか?毎日のように雨が降っていて気持ちもどんよりしがちですが、自分の趣味などを見つけて気分を少しでも上げていけるといいですね♪
さて、話は変わりまして今回は根面う蝕についてお話ししていこうと思います。(根面う蝕は歯の根元の部分が虫歯になってしまうことを言います)
わが国では、高齢になっても多くの歯が保たれるようになり、8020達成者が50%を超えました。
一生涯自分の歯を保って、自分の歯でなんでも食べられることは、QOLを考えたとき、極めて大切なことです。
一方で、高齢になっても多くの歯が保たれていることで、それだけで丁寧なセルフケアが必要になることも事実です。
高齢者では、身体機能の低下や基礎疾患などによる口腔環境の悪化などにより、根面う蝕のリスクが極めて高くなります。
根面は有機質が多く、耐酸性が低いだけでなく、象牙細管を通じて歯の中に細菌が侵入するため、根面う蝕は歯冠部う蝕に比べて進行が速く、場合によっては数ヶ月で歯髄に及んでしまうこともあります。
たとえ歯冠部のう蝕リスクが低かった人でも、唾液分泌低下などの要因で多発することもあります。
そこで今回は、根面う蝕の特徴を知っていただき、予防のためのセルフケアを理解していただくための説明をしていきます。
〜歯冠部う蝕と根面う蝕の違い〜
歯の頭の部分(歯冠部)は、エナメル質と呼ばれる酸に溶けにくい硬い組織で覆われていますが、歯の根の部分は、エナメル質に覆われておらず、象牙質が露出しています。
象牙質は、エナメル質に比べて酸に溶けやすく、虫歯になりやすいだけでなく、虫歯の進行も速いです。象牙質が虫歯になりやすい原因は以下の通りです。
①象牙質は臨界pHが高く、酸に溶けやすいから
エナメル質はpH5.5より低くなると溶け始めます(臨界pH5.5)。
一方、象牙質の臨界pHは6.0〜6.7程度で、エナメル質よりも酸に溶けやすい性質があります。
通常、歯垢(プラーク)はpH7付近の中性です。佐藤などの糖質を摂ると、プラーク中で酸が産生されます。
その後、唾液の緩衝作用によって元のpHに戻りますが、一時的にはpH4.5まで低下します。
②象牙質は有機質が多いから
エナメル質は約95%が無機質で、有機質は1%程度であるのに対して、象牙質は無機質が約70%、有機質が約20%で構成されています。
そのため、象牙質はエナメル質に比べて軟らかいのです。無機質が酸で溶け出すだけでなく、有機質が分解されることでも、虫歯は進行します。
また、無機質が溶けて、残った有機物の隙間に細菌が侵入して留まることで、さらなる歯の根元の虫歯の進行の原因になります。
③表面に象牙細管が開いているから
エナメル質と違い、象牙質の表面にはたくさんの穴(象牙細管)があります。
そのため、象牙質では、この穴を通じて象牙質内部に細菌が侵入したり、酸が入り込んできます。
歯の根元の虫歯がエナメル質の虫歯と違って進行が速いのは、この細管の存在が大きくかかわっています。
〜高齢になるとなぜ根面う蝕になりやすいのか〜
<う蝕から歯を守る唾液が減少するから>
唾液は、虫歯菌によって作られた酸を中和して歯を酸から守る(緩衝作用)だけでなく、酸によって溶けた歯を元に戻す(再石灰化)力があり、この2つの力で虫歯から歯を守っています。
年齢を重ねると、自然と唾液の出が少なくなります。また、薬剤の副作用で唾液減少が起きることが多くあります。
その他、放射線治療などによって唾液腺がダメージを受けた時などにも唾液は少なくなります。
菌を守ってくれていた唾液が減ってしまうことで、これまで以上のケアが必要になります。
<口腔内の水分保持が難しくかることも>
ご高齢の方では、さらに、舌や唇などのお口の周りの筋力が低下することで、お口の中全体に唾液が行き渡らなくなったり、唇を結びづらいためにお口の中の水分が蒸発しやすくなることでも口腔乾燥が助長されます。
そのような場合は、舌や唇などのお口を動かす体操(口腔周囲筋の筋訓練)をするとよいでしょう。
〜根面う蝕のリスクファクター〜
<歯周病によって歯肉が退縮することが一番のリスク>
虫歯は酸によって歯が溶ける病気です。
歯茎に覆われている歯の根の部分は、酸性になりにくいため、虫歯にはなりにくいはずなのですが、歯周病などで歯茎が下がって歯の根元が露出してしまうと、歯茎で覆われていた象牙質が酸にさらされ、歯が溶かされて、歯の根元の虫歯ができてしまいます。
そのため、歯の根元の虫歯を作らない環境を作るためには、歯茎が下がるのを防ぐことがとても大切です。
〜根面う蝕予防のためのセルフケア〜
<フッ化物配合歯磨剤を使用する>
歯の根元の虫歯予防には、フッ素入り歯磨き剤を使って、力を入れすぎないように、丁寧にブラッシングをすることが重要です。
フッ素濃度が濃い方が虫歯予防効果が高いため、1.000ppm以上の高濃度の歯磨き材を選ぶようにします。
また使用量も重要です。
量が少ないと、フッ素が唾液ですぐに埋まってしまうため、1g(長さ2㎝の歯ブラシの2/3)以上は使用するようにします。
フッ素を歯の表面に留めるには、2分間以上のブラッシングが必要です。
長い時間をかけて磨こうとしても、歯磨き剤が多すぎて磨きにくい場合には、最初に少量を付け、口の中全体を時間をかけて磨いた後、再度歯磨き剤を1g以上つけて、最後の2分間、歯の根元の全体にフッ素を届けるように磨くと良いでしょう。
さらに、ブラッシング後のすすぎは、できるだけフッ素が多く歯に留まるように、1〜2回程度に少なめにするとよいでしょう。
また、虫歯になりやすい方では、日常のブラッシングに加えて、フッ素を含む洗口液を用いると予防の効果があります。
<隙間ができた歯間の清掃には歯間ブラシを>
 根元の部分に関して、歯と歯の間では、デンタルフロスよりも、歯間ブラシのほうが効果的です。歯間ブラシは、大きさの選択が重要です。小さすぎるとプラークがとれず、大きすぎると根元の部分を傷つけてしまいます。無理なく軽い力で、歯の間き挿入できる大きさのものを使用しましょう。歯間ブラシにもフッ素入りの歯磨き剤をつけて使用するといいでしょう。
 今回お話しした根面う蝕ですが、高齢の方だけはなく若い方も歯周病になってしまった口腔内だとなりやすいものになるので、注意するようにしましょう!フッ素入りの歯磨き剤や歯間ブラシなどを使ってしっかりセルフケアを行うようにしましょう^_^