成人の矯正治療を始めるについて知っておいて欲しいこと☆

こんにちは、宇都宮市みろ歯科 歯科衛生士の中島です。

今回は成人の矯正治療についてです。かつては矯正治療=小児が行うものと考えられていましたが、近年、人口に占める子供の割合の現象や口元の美しさに対する意識の変化もあり、多くの成人の患者さんが矯正治療を受けるようになっています。小児と違って、成人の口腔内では歯周病や修復処置歯(詰めたり被せたりして治しているところ)、欠損歯(歯がないところ)などの存在が見られることが多くあります。また成人の場合、一般的に矯正装置に対する審美的要求も高いです。当院ではインビザライン(透明なマウスピース)矯正を行っていますが、成人の方からの人気や実際に行っている方も多いです。そこで、成人の方が矯正治療を始めようとする際に、その注意点についてわかりやすく説明したいと思います。


まずはこちらの図ですが、矯正治療の利点と欠点です。

究極的に矯正治療はQOL(生活の質)の向上、すなわち健康増進(審美・機能の向上)に寄与しますが、治療にともなう利点(ベネフィット)と欠点(リスク)について確認することが重要です。その他、コストや期間についても考慮しましょう。

矯正治療で起こりうることや、始める上で知って欲しいポイントを5つ載せていきます。

①矯正装置からかかる力で歯が動き、痛みがともなう。…歯は周りの骨と直接くっついて生えていると思われているかもしれませんが、歯の根の表面には歯根膜と呼ばれるシートがあります。矯正装置から歯に力がかかるとこのシートの周りから歯の周りの骨を溶かしたり、新しく骨を造ったりする細胞が現れ、その結果歯が動きます。このとき生じる炎症や組織の圧迫により痛みも生じます。患者さんにとって、矯正治療を行っていく上で大きなストレスになるのは歯の移動にともなう痛みです。装置を装着して翌日から2〜3日間が痛みのピークで、徐々に痛みがなくなり、約1週間後には慣れていることが多いです。矯正治療を行う上で痛みの問題から逃れることは難しいため、患者さんには痛みに対する心構えをしていただく必要があります。発痛時には一時的に鎮痛剤を服用することが可能ですが、抗炎症作用により歯の移動が阻害される可能性があるため、注意が必要です。

②歯の混み具合と口元の状態で抜歯の有無が決まる。…抜歯する理由は、大きく2つあります。1つ目は歯の混み合いの程度です。ベンチに定員以上座らせるのが難しいのと同じイメージです。2つ目は口元の状態です。歯が混み合っていなくても、口元が出ていて口が閉じにくくなっていることがあります。このような場合、前葉を引っ込めて口を閉じやすくするために抜歯することがあります。非抜歯矯正が良いとは限りません。インターネットなどでそういう言葉を用いて広告している医院もあり、魅力的に感じるかもしれません。本来ならば抜歯による強制が妥当であったと考えられる患者さんが非抜歯で治療され、矯正前より口が閉じにくくなったり、歯肉退縮が見られたりすることがあります。「矯正治療のために出来るだけ歯を抜かないようにしよう」という発想は、「虫歯や歯周病になった歯をできるだけ抜かないようにしよう」という発想とは次元の違う話です。

③過去の治療や歯周組織の状態によっては矯正治療が難しくなる。…10代に比べて大人の歯ではさまざまな治療がされていることが多いです。大きな被せ物があったり、神経を取っていたり、元々の歯の大きさが変わっていたり、既に何本か抜歯されて、体が傾いていたりすることもあります。そのため、矯正装置をつけるのが難しくなることがあります。また、歯周病で歯ぐきや歯の周りの骨が下がっていることもあります。動かしたい歯の周りの骨が下がってしまっている場合、望ましい位置で歯を動かすことが難しくなります。

④取り外せるもの、目立たないものなどさまざまな矯正装置がある。…矯正装置には患者さん自身が取り外せるものと取り外せないものがあります。取り外しのできる透明なマウスピースタイプのものは目立たず、歯磨きに支障がないことが利点ですが、歯の動きに制限があってどんなケースにも適応できるわけではありません。また、装着時間が短いと歯はきちんと動きません。一方、取り外しができない、歯の表面にくっつけるタイプのものはつねに歯に対して力が作用しているので、取り外し式に比べて効果的な面がありますが、歯磨きがしづらい、やや目立つなどの欠点があります。当院では前歯部の部分矯正、インビザライン矯正を実施しております。パンフレットや院長が執筆した冊子もありますので、是非ご覧下さい!

⑤元の位置に戻ろうとしたり、年月の経過で歯並びの変化が起こる。…歯の根の周りはゴムのような繊維(歯根膜線維)に取り囲まれていて、歯を動かすと一部の繊維は引っ張られます。歯を動かした後もその歯を支えておかないと、ゴムが元の位置へ戻ろうと引っ張ります。そこで、治療後に後戻り防止装置(保定装置)を使うと、この傾向は落ち着きます。また、後戻りにかかわらず、ヒトの歯並びは加齢とともに変化します。後戻りと加齢による歯並びの変化を出来るだけ防ぐために、後戻り防止装置を長期間使うことが大切です。

私もインビザライン矯正が春に終了し、後戻り防止のマウスピースをつけています。矯正をしたことで笑顔に自信が持てて、食事もしやすく(前歯で噛み切れるようになりました)、また体のバランスが良くなったような気もします。自分が矯正経験者ということもあり、実際にもインビザラインの型どりや患者さんの経過観察にも多く関わらせてもらっています。日に日に変化していく患者さんの歯並びや自信に満ちた笑顔を感じることができ、嬉しく思います。
ユニットにも矯正のご案内がありますので、ぜひ気になった方はなんでも聞いてくださいね!