世界の子どもの歯科事情⑦

こんにちは!宇都宮市みろ歯科受付鈴木です。
みろ歯科前の城址公園の桜も今年は例年よりもかなり早めに咲き始めました。
現在、みろ歯科の受付からも毎日窓の外を見つつお花見をしております。
今年はコロナウイスの影響もあり、お花見が自粛されていますが、四季折々の風景の中でこの時期の受付から見える桜のある風景が一番大好きです。

 

 

今回も世界の歯科事情の紹介です。今回はマレーシアの歯科事情についてお話していきたいと思います。

〇マレーシアってどんな国?
正式名:マレーシア
首都:クアラルンプール
国土:330.503㎢
人口:約3.200万人(2016年マレーシア統計局)
1人当たりGDP:9.813ドル
マレーシアの国土はマレー半島とボルネオ島北部(東マレーシア)で、面積は約33万㎢(日本の約90%)です。マレー半島は北部をタイ、南部をシンガポールと、東マレーシアはブルネイ、インドネシアと国境を接しています。人口は約3.000万人で、日本の1/4です。公用語はマレー語ですが、他民族国家であるたに中国語やタミール語も使用されています。イギリス連邦の一員であるマレーシアでは英語も一般的に使われており、大学での歯学教育はすべて英語で行われています。

〇マレーシアにおける歯科治療費
マレーシアには日本のような公的医療保険制度はありませんが、公立の医療機関での医療サービスに関しては、政府からの補助金制度があります。したがって、患者が払う費用はとても安く、マレーシア国民の場合は、抜歯は1RM(マレーシア・リンギット)(約30円)、充填は2RM(約60円)です。また17歳以下の子どもは無料で外来診療を受けることができます。低所得者や政府の職員も、公的医療機関で診療を受ける場合は無料です。
一方、民間の医療機関では、「診察のための待ち時間は短い」などサービスは充実していますが、費用も高く、全額自己負担となります。そのため、民間の医療保険プランを利用して、従業員の医療費を一部負担する企業も増えてきています。しかし、歯科治療が含まれている医療保険プランはほとんどありません。

〇マレーシアにおける公的歯科保健事業
マレーシアの公的保健事業には、プライマリーケア、専門医によるケア、コミュニティケアの3種類があります。このような公的事業は、保健省で働く公務員の歯科医師によって提供されます。日本と異なり、マレーシアでは開業歯科医が地域における公衆衛生事業を担当すことはありません。
1. プレアイマリーケア
マレーシアの保健省関連施設におけるプライマリーケアは、ライフステージに即した歯科疾患の予防や健康増進プログラムの提供と、一般住民を対象とした歯科治療の提供です。小児歯科関連の事業は、以下のように実施されています。
1) 妊婦対象のプログラム
保健省の母子クリニックの中で、子どもの歯の健康(萌出時期やケアの方法)に関する教育を妊婦を対象に行っています。また、妊婦の歯科健診や歯科治療も行います。
2) 幼児対象のプログラム
妊婦プログラムに引き続き、定期健診のために母子クリニックを訪れる母子を対象に、主に4歳以下の幼児の歯科健診、歯科治療と保護者に対する健康教育を行っています。
3) 幼稚園でのプログラム
幼稚園において、デンタルナースが歯磨き指導や、人形劇による健康教育などの、歯科疾患の予防や、非侵襲性修復治療を行います。
4) 学校でのプログラム
全国の小学生の98%、中高生の84%が、学校に設置された歯科クリニック(約871診療台)や歯科診療車(約44診療台)による学校歯科保健サービスを利用しています。歯科医師やデンタルナースが健康教育、歯科検診、予防処置、簡単な修復処置、乳歯の抜歯など行います。対象となる児童生徒には、シーラントプログラムも提供されます。
また、公立病院に配置された移動式歯科医療チームによる学校歯科保健サービスもあります。これは、歯科医師、デンタルナース、歯科助手、運転手によって構成されるデンタルチームが、簡易式のデンタルチェアー(約2.196診療台)ポータブルのハンドピース、バキューム、照明、歯科器材などを車やヘリコプターで学校に運んで実施するプログラムです。
5) 一般歯科治療
全国に配置されている保健省管轄の歯科診療所(704か所、2.139診療台)で、小児も成人も歯科治療を受けることができます。民間の歯科診療所(1.686か所)は、高所得者が多い都市部や町に集中しており、地方にはほとんどありません。また、大学病院においても保健省の歯科診療所と同様なサービスが提供されています。治療費は少し高めですが、民間の歯科診療所と比較すると安く設置されています。国立大学では、歯科学生の臨床実習で患者になってくる人の治療費を無料にしています。
2.専門医によるケア
小児患者への一般的な歯科治療は。公立や民間の歯科診療所で歯科医師やデンタルナースが行います。全身疾患を有している特別な患者や、手術などが必要となる複雑な症例は、小児歯科の専門医がいる大きな病院で診療を行います。保健省では一般の歯科医師の紹介状がないと、小児歯科の専門医(全国約30名)に診てもらえない仕組みになっています。
3.コミュニティーケア
1)水道水フロリデーション
マレーシアにおける水道水フロリデーションは1975年にシンガポールで開始されました。当時シンガポールはマレーシアの一部でしたが、その後独立しました。1972年にマレーシア政府は、水道水フロリデーションを優先順位の高いう蝕の第一次予防プログラムとして承認しました。その後、政府の支援のもと水道水フロリデーション地域は拡大していき、2006年には人口73.9%がフッ化物による恩恵を受けています。フッ化物イオン濃度は0.5ppmに保持されるように保健所の歯科医師が定期的に測定し、報告しています。
2)地域歯科診療プログラム
歯科診療所へのアクセスが困難な地域や貧困地域に対しては、歯科健診、健康教育、簡単な修復処置、抜歯などが、保健省、防衛省、歯科大学により毎年無料で実施されています。国立の歯科大学の場合は、教員と一緒に学部学生も住民の健康教育や歯科治療に関わります。

〇小児の口腔保健状況
マレーシアでは、さまざまな予防プログラムの結果、乳歯も永久歯もう蝕有病者率やう歯数が減少しています。6歳児のう歯数は1970/71年は6.3歯でしたが、1997年に4.1歯、2007年に3.6歯と減少しました。12歳児のDMFT、1997年では1.9歯でしたが、2007年には1.1歯に減少しました。16歳児のDMFTは1997年から2007年の間に、3.3歯から2.1歯に減少しました。同期間にカリエスフリーの子どもの割合(dft=0orDMFT=0)は、6歳児は19.1%から25.5%に、12歳児は39.1%から58.5%に、16歳児は24.5%から40.4%に増加しました。

〇歯科健康教育材料や治療ガイドライン
マレーシア保健省口腔保健部のホームページには、歯科医師対象と一般の人々の対象のさまざまな歯科関連情報が提供されており、だれでも見ることができます。内容をダウンロードすることも可能で、開業医が自分の歯科診療所で使用することもできます。公用語のマレー語だけではなく、対象によって英語、中国語そしてタミール語の教材も用意されています。

〇まとめ
マレーシア政府ではさまざまな公的歯科保健プログラムへの支援によって、小児歯科のう蝕有病者やう歯数が減少しています。