世界の子どもの歯科事情④

こんにちは!
宇都宮市みろ歯科受付鈴木です。

先日誕生日迎えました!
今年は自分でアップルパイを作って自分の誕生日ケーキにしました。
きちんとパイ生地から作って・・レッスン中生地を作る作業が一番大変でした。
これからりんごが美味しい季節が到来するので、ここまで本格的なものではないけれど、ちょっとアレンジして美味しいお菓子を作りたいと思います。

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今回も世界の歯科事情4か国目の紹介です。
今回はモンゴルの歯科事情についてお話していきたいと思います。

〇モンゴルてどんな国? 
 正式名:モンゴル国  首都:ウランバートル  国土:1.564.116㎢  人口:約318万人(2017年)  1人当たりGDP:3.640ドル

ユーラシア大陸の内陸にあるモンゴルは、日本の約4倍の面積があります。
しかし人口は318万人と非常に少なく、横浜市の人口(約370万人)より少ないのです。
首都はウランバートル(146万人)で、全人口の約46%が集中しています。

〇モンゴルの歯学事情 
モンゴルにおける医学教育全般は、現在のモンゴル国立医療科学大学の前身であるモンゴル国立大学の医学部(1942年設立)が中心となって担ってきました。
1961年には独立した医科大学となり、その後さらに名称の変更が数回行われ、現在に至っています。 
旧ソ連において教育を受けた5名の学生が帰国して、モンゴルで歯科専門職(歯科医師)の資格を取得したのは1955年です。
その後、1961年にモンゴル国内で3年制の歯学専門教育が開始されるようになり、5年制の歯学教育が開始されるようになったのは1972年です。
1978年までは、医学部内に設置された歯科学講座は、年度によって耳鼻科、小児科あるいは外科に属していました。 
1995年に、歯科学講座は”Center of Dental Research”へと名称を変更し、2000年、歯学部がモンゴル国立医科大学に設立され、2006年には、歯科技工士学校が看護大学からモンゴル健康化学大学歯学部へと移管されました。
また、2010年には新しく4年制の歯科衛生士科(定員は約30名)が歯学部内に開設されました。
それまでモンゴルでは看護師が歯科ほ介助業務を行っていました。
さらに、2013年には、1年制の歯科助手養成プログラムも開始されました。 
私立医科大学の歯学部は、常勤教員1名、非常勤教員4名、学生定員12名で2002年に開設されました。
5年制で、現在は7名の常勤教員が勤務しています。
開設以来総入学者数は279名で、9期の卒業生を送り出しています。
また、その他数校が歯学部の設立を計画中であるそうです。
民主化後は、制度的に大学や学部の設立は容易でしたが、歯学教育の質と保証と将来の歯科医師過剰対策のために、必要な教員数や設備などに関する設置基準が、最近、制作されました。 
医師、歯科医師の国家試験については、保健省所属する独立行政法人の管轄下にありますが、事実上は大学自体が国家試験を行っています。
歯科医師面鏡の有効期間は5年間であり、生涯研修制度に指定された講演の受講などの単位を取得した上で、5年ごとに更新する制度となっています。

モンゴルでは、医師、歯科医師の合計数についての公式統計はありますが、歯科医師に限定した数字は現在まで公式に発表されていません。
社会主義時代は医師と歯科医師との区別があいまいで、医師養成課程の中で歯科学をさらに選択して学んだものが歯科医業を行うという制度が民主化後もしばらく続いたことによると思われます。
歯科医師数として最も参考になる数字は、「1965~2008年の間に約1500名の歯科医師が養成され、2012年時点で約900名が現役である」との当時のアマルサイハン歯学部長の報告です。
したがって、人口10万人あたりの歯科医師数は約30名と推測されます。

〇学校歯科保健の取組み 
経済発展に伴い、モンゴルの伝統的な食習慣にも変化が生じ、学童のう蝕は増加してきました。
しかし、歯科医師が不足しているモンゴルでは、子どもの歯科治療に十分に対応できていませんでした。 
そこで、約10年前にウランバートル市内のモデル校に、学校歯科室が設置されました。
歯科室内の機器(デンタルユニット、エックス線撮影機器、消毒滅菌用機器など)、歯科医療器材、歯科用材料、そこで働く歯科医師の給与など、費用はすべて台湾歯科医師会と台湾ロータリークラブからの支援金による事業です。
子どもたちは、授業時間内に交代で歯科室に来て、歯科検診、予防処置、歯科治療を受けることができます。
費用はすべて無料で、学校歯科医は健康教育にも従事し、歯みがき指導や間食指導を実施しています。 
このような学校歯科保健活動が子どもたちのう蝕予防に有効であることがわかり、その後、モンゴル政府の支援を得ることができ、多くの小中学校に学校歯科室が設置されるようになりました。

〇開業歯科医院と移動式歯科クリニック  
ウランバートルのような都市部においては、民間の歯科医院が多く開業しています。
診療設備なども整っており、インプラント治療なども行われています。
ただし、新規開業には、医療法人としての免許が必要で、この免許の取得が現在は非常に困難いなっているため、すでに設立された医療法人の買収あるいは名義を借り受けるなどの必要が生じ、現実には厳しい開業規制となっています。
また、個別の歯科医院の設置要件として、たとえば、集合住宅の建物では、1階で専用の出入り口がある場合に限られること、また消毒前の器具など受け入れ口と消毒後の払い出し口がそれぞれ別個になっている消毒滅菌室が、診療室とは完全に仕切られて設置されていることなど、非常に厳しい基準を守る必要があり、新規開業は大変難しいです。
さらに、基準の変更もしばしば行われ、2016年からすべての歯科医院は小児の治療に対応できる設備を備えなくてはならないことになり、一部の歯科医院では対応に苦慮しています。 
一方、ゲル(移動式住居)の中で生活する遊牧民がいるような地域には、公的および民間の歯科医院のほとんどありません。
そのような地域では、モンゴル国立医療化学大学やモンゴル歯科医師会などと連携して、日本、韓国、台湾などからのNGO団体や大学がボランティアで、移動式クリニックを設置して、歯科検診、予防活動、歯科治療などを実施しています。 
歯科医療施設のない地方においては、歯科医療施設へのアクセスをよくすること、人々の口腔関連リテラシーを向上させること、効果的な歯科健康教育モデルを作成することが目標となっています。

〇乳幼児のう蝕有病状況 
2004/2005年にウランバートル市の中心部と郊外の保育園児670名(中心部327名、郊外343名)を対象とした歯科保健調査で、以下のことが明らかになりました。
う蝕有病者率は中心部、郊外それぞれ
1歳児:32.0%、24.6%、
2歳児:77.1%、60.3%、
3歳児:96.0%、80.4%、
4歳児:97.9%、90.0%、
5歳児:96.6%、94.4%で、
いずれの年齢も中心部の方が郊外よりも高いという結果でした。
また、1人平均う歯数も、
1歳児:1.31歯、0.80歯、
2歳児:3.73歯、2.93歯、
3歳児:6.68歯、4.00歯、
4歳児:7.74歯、5.56歯、
5歳児:8.60歯、6.62歯と、
中心部の方が郊外よりも多く、2~5歳では有意差が認められました。

現在、日本では、都市部と地方の子どものう蝕有病状況を比較すると、地方の子どもの方がう蝕は多いですが、モンゴルでは都市部の子どもの方がう蝕が多くなっています。
これは、経済成長が著しい都市部で、甘味食品の購入が可能となり、食生活が多く変化したことが主な原因と考えられています。
日本においても、戦前は都市部の子どもの方が地方よりう蝕が多かったと報告されています。 
2011年7月よりモンゴルでは妊婦登録者に対して、母子健康手帳が配布されることになりました。
歯科検診の項目も取り入れられていて、日本を参考として歯牙単位の診査だけでなく、う蝕罹患型、口腔衛生状態、軟組織、咬合についての評価も記載できるようになっています。

〇間食は塩ゆでした羊の骨? 
ウランバートル市内の保育園を見学したときの興味深い経験です。
同じモンゴロイドなので、モンゴル人の顔立ちは日本の子どもとよく似ています。
訪問時にちょうどおやつの時間となり、何を食べるのだろうと期待して待っていたら、羊の骨が山盛りになって出てきました。
肉屋さんで商品にする肉を切り取った後の骨をもらってきて、保育園で塩ゆでしたものです。
骨に少しだけこびりついている肉片を子どもたちはむしゃぶりついて食べていました。
小さい子供が食べやすい骨を選んで、おいしそうに食べている様子は、さすがに遊牧民族の血をひいていると感心しました。
食べたあとは、全員しっかり歯磨きしていました。 
このような砂糖を含まない食品を間食として毎日食べているとしたら、う蝕は発生しないはずですが、保育園児の口腔内にはう蝕が多く、かなり悪い状況です。
保育士さんにお話を聞いたところ、いつもは甘いお菓子が提供されていますが、月に1回だけ、昔の伝統的な食生活に戻ろうということで、塩ゆでした羊の骨が出てくるようになったわけです。

〇まとめ 
日本の歯科大学に留学したモンゴル人歯科医師は多いので、今後、我が国の歯科保健制度や歯科医療技術などを参考にして、モンゴル国民の歯科保健の向上に貢献していくと思われます。