世界の子どもの歯科事情③

こんにちは!
宇都宮市みろ歯科受付鈴木です。
私の近況はといいますと、習い事のケーキのクラスをマスタークラスにしました。
写真は初めて作ったオペラです。
何とか形になりました。
2019.5.22.jpg
今回も世界の歯科事情3か国の紹介です。
今回は台湾の歯科事情についてお話していきたいと思います。
〇台湾の歯科事情
台湾の歯科医師の数は、13,391名(2015年)です。
そのうち約35%の歯科医師が台北市で働いています。
首都圏における歯科医師1名あたりの人口は1,500名と少ないですが、地方ではその数が4,700~5,800名にもなり、歯科医師の分布には大きな地域差が認められます。
台湾には歯学部(口腔医学院)が設置されている大学が5校あります。
高校卒業後に入学して、6年間の歯学教育(インターシップ1年を含む)を受けます。
すべての大学に卒後教育コースがありますが、基礎系は少なく臨床系の専門医を目指すコースがほとんどです。
2010年に、最後の週が「口腔保健週間」にきめられました。
台湾歯科医師会と保健省のヘルスプロモーション課は連携して、口腔疾患の有病状況や歯科疾患に対する最新の予防情報を国民に積極的に提供しています。
主な口腔メッセージは以下のようなものがあります。
・フッ化物配合歯磨剤を使用してブラッシングを行うこと
・ブラッシング方法としてバス法が推奨されること
・歯周疾患を予防するために、デンタルフロスを使用すること
・半年後ごとに定期的に歯科検診を受けること
台湾には1995年から開始された国民健康保険があり、約98%の国民が加入しています。
歯科領域の保険診療では、補綴処理と矯正治療以外のほとんどすべての歯科治療が給付対象となっています。
〇う蝕の有病状況
1.乳歯のう蝕 
台湾における2011年の全国調査によると、乳歯のう蝕有病率およびう歯数は、
1~2歳児:3.0%、0.3歯、
2~3歳児:61.4%、3.1歯、
4~5歳:76.0%、5.0歯、
5~6歳児:79.3%、5.4歯です。
経年変化をみると、
1997年から2011年の14年間に
3~4歳児のう蝕有病率は75.0%から61.4%へ、
う歯数は4.4歯から3.1歯へと、
5~6歳児のう蝕有病率は89.4%から79.3%へ、
う歯数は7.3歯から5.4歯へと減少しています。
一方、日本の歯科疾患実態調査によると、乳歯のう蝕有病率および歯数は、
1歳児:0%、0歯、
2歳児:7.5%、0.2歯、
3歳児:25.0%、0.6歯、
4歳児:34.8%、1.5歯、
5歳児:50.0%、2.8歯です。
台湾の幼児の乳歯のう蝕は、日本と比較して多いことがわかります。
〇フッ化物予防によるう蝕予防プログラム
台湾保健省のヘルスプロモーション課は、2004年から5歳児以下の子どもを対象とした歯科専門家によるフッ化物塗布事業を年に2回実施するようになりました。
2013年には6歳以下までサービスの対象を拡大しました。
さらに、低所得や遠隔地に居住する家庭の子ども、障害児などさまざまな子どものニーズに応えるため、この事業の対象者は12歳児まで延長され、年に4回まで塗布の実施が可能になりました。
この事業に参加して年に1回以上のフッ化物塗布を受けた未就学児の割合は、2007年の19.5%から2011年の33.3%に増加しています。
2013年からは歯科医院で塗布するだけでなく、幼稚園や保育所に歯科医師を派遣して塗布するようになり、さらにフッ化物塗布経験者の割合が上がることを期待しています。
台湾には水道水フロリデーション地区はありません。
そこで、台湾歯科医師会はその代替えとして小学校における集団フッ化物先行を政府の支援を得て推進してきました。
台湾小児歯科学会が行った予備調査では、0.05%のNaF溶液を毎日試用するフッ化物洗口のう蝕予防効果(44%)は、0.2%のNaF溶液で週1回洗口(33%)するより高いという結果が示されました。
しかし、実際には、簡便に実施できる週1回法のフッ化物洗口が採択されました。
2004年には、約1,900万の小学校の98%以上が学校で週1回、昼食後に0.2%NaF溶液10ccを使用してフッ化物洗口を行いました。
〇台北市のシーラントプログラム
台北市では2013年から、すべての小学校1年生の児童(6~7歳児、12,435名)の第一大臼歯を対象に無料でフィッシャーシーラントを実施しています。
300以上の開業歯科医院が台北市の政府と契約して、このシーラントプログラムを実施しています。
2,770名(22.3%)の児童は第一大臼歯がまだ1歯も放出しておらず、シーラントプログラムの対象にはなりませんでした。
また、227名(1.8%)の児童は、4歯すべての第一大臼歯にう蝕が認められ、やはり、プログラムの対象にはなりませんでした。
事業開始4か月間に9,438名(75.9%)の児童の23,663歯の第一大臼歯にシーラント処置が行われました。
この数は、対象となる歯の33.6%にあたります。
シーラントによるう蝕予防効果を評価するために、今後調査が行われる予定です。
 
〇口腔清掃週間
2005年に行われた台湾国民を対象とした保健省の調査によると、毎日ブラッシングしている人の割合は98.2%、一日のブラッシング回数は平均1.87回、そしてデンタルフロスを定期的に利用する人の割合は17.8%でした。
就寝前のブラッシングに関しては、国民の約1/4が実施いていないことがわかりました。
またデンタルフロスの使用者はどの年齢層においても多くなり、そして女性は男性よりもブラッシングをよく行っており、教育レベルが高いほど口腔清掃習慣が良好な傾向にあることが報告されています。
〇学校歯科保健プログラム
台湾の教育省は、‛Health Promoting School’プログラムを2005年に開始しました。「口腔保健」は主要テーマの1つであり、参加した学校の1/3以上が口腔保健に関する目標値を掲げました。
教育省は学校歯科医のネットワークづくりをしようと試みましたが、2,500校の小学校のうち、学校歯科医を配置することができたのは20%以下で、現在このプログラムは事実上、一時中断されています。
台湾では、日本のようにすべての小学校、中学校、高等学校に学校歯科医が配置されているわけではありません。
台湾の学校歯科保健プログラムとしては、前述したと週1回のフッ化物洗口、フッ化物歯面塗布、フィッシャーシーラントプログラムの他に、昼食後のブラッシングの実施が推奨されています。
そして、子どものブラッシングやフロッシング技術を向上させていくために、全国の歯磨きコンテストが実施されています。
〇小学生になる全国歯磨きコンテスト
台湾歯科医師会による小学生全国歯磨きコンテストは1993年から毎年行われていましたが、2006年2011年の期間は中断され、2012年に再開されました。
参加対象者は小学校4~5年生で、1チーム10名で構成されています。
2015年には各県や市における歯磨きコンテストで優勝した36チームが全国大会に出場しました。
コンテストでは、最初に口腔保健に関する知識を確認する筆記試験が行われます。
その後、小学生は台湾銘菓のパイナップルケーキを20ccの水と一緒に食べます。
ケーキの中に入っているパイナップルジャムは甘くて粘着性が高く、歯につきやすい性状です。
次に、審査員(歯科医師)が観察する前でフロッシングとブラッシングを決められた時間、決められた方法で行います。
歯磨き中はうがいや水を飲むことは禁止されています。
審査員は子どもたちの口腔清掃方法を観察して、その技術の巧拙を評価します。
最後に歯垢染色剤を使用して染め出し、デンタルチェアの上で詳細に歯垢の付着状況を評価して点数を付けます。
また、学校が作成した口腔保健に関するポスターも評価し、総合得点が最も高い最優秀校を決めます。
台湾歯科医師会は、この全国小学校歯磨きコンテストのイベントを通じて、子どもたちに口腔内を清潔にして口腔の健康維持・増進することの大切さを伝えようとしています。
小学4年生(10歳)のときからブラッシングだけでなくデンタルフロスの使用法を正しく学んで実践していくことは、その後の口腔保健状況の向上に大きくえいきょうすると思われます。
1参加資格
小学校代表の4、5年生10名で構成されるチーム。
各県・市において地区の歯磨きコンテストで優勝した計36チームが全国大会に出場する。
2コンテストの手順
1)筆記試験を受ける(10問の正誤問題と10問の穴埋めテスト)
(内容は台湾歯科医師会が作成した教材から出題される)
2)パイナップルケーキと水20ccを摂取する
3)フロッシング(6分間)を右上→左上→左下→右下の順で行う
4)ブラッシング(5分間)を右上→左上→左下→右下の順で行う
5)歯垢染色後に歯垢付着の評価を受ける
3.評価方法
歯垢付着は、O’LearyのPlaque Control Recordを改定した記録方法で以下のように評価する。
・探針ですべての歯の唇頬側及び舌側の歯頸部を軽く掻きとって歯垢付着がみられた場合は1か所につき1点の減点
・探針で頬側の歯間部とポケット部分を軽く掻きとって歯垢付着が見られた場合は1か所につき2点の減点
・舌側の歯間部は評価しない。なお、審査員となる歯科医師は事前に評価方法のカリブレーションを受けている。
採点は、100点満点で以下の配分に決められている。
・20点:筆記試験
・40点:フロッシングとブラッシングの技術
・30点:歯垢付着の評価(プラークスコア)
・10点:学校が制作したポスター
〇まとめ
台湾では、教育省と台湾歯科医師会が連携して学校保健プログラムを積極的に推奨しています。