年齢による指しゃぶりの考え方と対応
幼児期前期(1歳すぎ~3歳頃)のお子様の指しゃぶりへの対応
3歳くらいまでの指しゃぶりは赤ちゃんのときの「吸う」という生まれながらの反射のなごりであると考えてよいでしょう。この時期の指しゃぶりは、発達期の生理的なものとしてとらえ、あまり神経質になる必要はありません。保護者の方はお子さまを温かく見守りましょう。
お子さまの3歳の誕生日を目標に指しゃぶりをなくす場合、「3歳になったら指しゃぶりをやめようね」と少しずつ言い聞かせます。例えば、誕生日会など、家族の前で指しゃぶりをやめる約束をします。こういったきっかけづくりも効果的です。
指がふやけていたり「指だこ」ができたり、上下の前歯の間にすき間があくことがあります。乳歯の奥歯が生える2歳半~3歳くらいまでにやめることができれば、自然に治る可能性があり、永久歯への影響は少ないと考えてよいでしょう。
※指しゃぶりをなくす時期は、年齢がひとつの目安になりますが、子どもの精神発達などには個人差があり、一概にすべてのお子様にあてはまるわけではありません。
幼児期中期(3歳~5歳頃)までのお子様の「ちょっとしたきっかけでなくなる指しゃぶり」への対応
乳児期からの指しゃぶりが3歳をすぎても続いている場合、幼稚園の入園などをきっかけにやめることがあります。これは、子ども自身の友だちづき合いが広がり社会性がめばえ、いろいろなことに興味を示すようになるからです。赤ちゃんの象徴である指しゃぶりをしている姿を、お友達に見られたくないという意識も出てきます。
このような子ども自身の自覚が出てくると、指しゃぶりをやめるいいきっかけになります。また、家族に指摘されてもなかなかやめられない場合でも、歯科検診で歯科医に指摘されて、指しゃぶりをしなくなる子どももいます。
保護者の方は、お子様の生活リズムを整え、外遊びや運動をさせてエネルギーを十分に発散させたり、手や口を使う機会と増やしてあげましょう。また、スキンシップをはかるため昼寝や夜寝つくまでの間は、お子様の手をにぎったり、絵本を読んだりして安心させてあげましょう。指しゃぶりをなくすためには、ご家族の方のやさしい励ましや、支援が必要になります。
しかし、昼間でも頻繁に指しゃぶりをしている場合には、積極的なはたらきかけが必要になります。
この時期の指しゃぶりによる影響
上下の前歯の間にすき間があいたり、上の前歯が出てきます。しだいに口呼吸になり、上くちびるが乾いてめくれ上がったような口元になります。
※指しゃぶりをなくす時期は、年齢がひとつの目安になりますが、子どもの精神発達などには個人差があり、一概にすべてのお子様にあてはまるわけではありません。
幼児期後期(5歳~6歳頃)をすぎたお子様の「頑固な指しゃぶり」への対応
乳児期からずっと続いている指しゃぶりは、発達期の生理的な指しゃぶりをやめるきっかけがなくなり、習慣になり残ってしまった場合が多いようです。長期間にわたる指しゃぶりは、しゃぶり方や回数にもよりますが、歯並びなどに影響がでてきます。
この時期の指しゃぶりは自然にはなくなりにくいため、積極的にやめさせるようなはたらきかけが必要になります。
長期間にわたる指しゃぶりや、一度やめた指しゃぶりが再び始まった場合、なぜお子様が指しゃぶりをしているのか、原因を考えてみてください。生活環境に問題がある場合、それを取り除く努力をすることにより、指しゃぶりの回数が徐々に少なくなることもあります。
まず、お子さまがどのようなときに指しゃぶりをしているのかを、観察することが大切です。また、お子様にストレスが大きいと思われるような事態がおこっていないかどうかを、みつめ直しましょう。心理的にも環境的にも問題がない場合は指しゃぶりについて知識のある小児歯科医、矯正歯科医、一般歯科医に相談し、「指しゃぶりをなくすトレーニング」を始めましょう。
この時期の指しゃぶりによる影響
指しゃぶりを放っておくと、歯並びけでなく、あごの骨の発育にまで影響がでてきたり、上下の歯の間に大きなすき間があくと、舌たらずな発音になります。
※指しゃぶりをなくす時期は、年齢がひとつの目安になりますが、子どもの精神発達などには個人差があり、一概にすべてのお子様にあてはまるわけではありません。
指しゃぶりと歯ならびや咬み合わせとのかかわり
しゃぶる指の種類やどのくらい深く口の中に入れるかというしゃぶり方によっても違いますが、指しゃぶりを長期間続けるほど、歯ならびや咬み合わせへの影響が出やすくなります。また、この影響はあごの骨や筋肉の状態、口のくせで大きく変わってきます。
また、歯並びの状態によっては早期の矯正治療が必要になる場合もあります。お気軽にご相談下さい。
指しゃぶりをみまもる時期・はたらきかける時期
時期 | 手や口の運動・特徴 | 指しゃぶりへの対応 | ||
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胎児期 | 14週頃 | 口に手をもっていく | 胎児の指しゃぶりは、口の周りの感覚が発達するはじまり 生まれてすぐに母乳、ミルクを飲むための練習として重要な役割となる |
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24週頃 | 口で吸う動きがでてくる | |||
32週頃 | 飲み込む動きの完成 | |||
乳児期 | 生後2 ~ 4ヶ月 | 口のそばにきた指や物を無意識にしゃぶる | 指しゃぶりやおもちゃしゃぶりは、ミルク以外の食べ物をとる練習に重要な行動で、清潔なおもちゃで口遊びをさせることも重要 | |
6ヶ月頃 ~ 1歳頃 | 赤ちゃんのときに覚えた指しゃぶりが習慣として残る。眠いとき、空腹時に指しゃぶりは無意識に現れるが、自然に回数は減ってくる | |||
幼児期前期 | 1歳すぎ ~ 3歳頃 | 昼間の指しゃぶりの減少。 | この頃の指しゃぶりは、発達期の生理的なもので、あまり神経質にならず、子どもの生活全体を温かくみまもる | |
幼児期中期 | 3歳 ~ 5歳頃 | 習慣化した指しゃぶりが眠いとき、退屈なときに残る。 | 生活のリズムを整えることが大切 | |
習慣化した指しゃぶりでも社会性が芽生え自然に減る 注意が必要な指しゃぶりは昼夜の頻繁な指しゃぶり | 外遊びや手や口を使う遊びを増やし、子どもとのスキンシップをはかり指しゃぶりをやめるようなきっかけをあたえる 昼夜の頻繁な指しゃぶりは、積極的な働きかけが必要になる |
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幼児期後期 | 5歳 ~ 6歳頃 | 指しゃぶりをやめるまたは回数は減る 注意が必要な指しゃぶりは、遊びの中での指しゃぶりや、いったんやめた指しゃぶりの再発 | なぜ指しゃぶりをしているのか原因をみつける 子どもの心理、生活環境に問題がないかどうかを観察する 問題がなければ、「指しゃぶりをなくすトレーニング」を始める |
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学童期 | 6歳すぎ | 指しゃぶりはしない、または割合はかなり減る 持続する指しゃぶりも社会性と自己コントロール能力が高まることで自分でやめようという意思がでてくる | 子ども自身が指しゃぶりの影響を自覚するので「指しゃぶりをなくすトレーニング」を始める 歯並びや口元への影響を説明する 子どもの体や心の問題が心配な場合は小児神経科医や臨床心理士への相談が必要 |