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当院のこだわり~なぜいきなり削ったり治療せずに、まず検査やクリーニングなのか?3つの理由~

もちろん怪我や事故で緊急に治療が必要な場合や、お盆などの帰省中に詰め物が取れたからとりあえずつけなおし、前歯が欠けてしまって営業の仕事にならない、人前で話ができない、入れ歯が割れてしまってすぐ修理しないと食べられないなどそういう状況ではいきなり治療します。
ただ、基本はまず先に検査とクリーニングです。
なぜか?

それには3つの理由があります。

1つめは、簡単に言うと検査しなければ確定診断できない(誤診を招く)からです。

診断が確定できなければ治療もできません。
一般的な病気の診断の方法として、症状のある部位、程度、時間、状況を伺った後、いくつかの原因を推測し、そして検査をして、確定させて、診断に至ると思います。

ちょっと極端な例かもしれませんが、もしお腹が痛くて病院に行ったときに、何の検査もせずに、いきなり手術台に乗せられて開腹されたらどう思いますか?普通はまず検査ですよね。
歯科治療だからそこまで大げさなことはないとお思いになるかも知れません。
ただ実際に当院でこんな事例がありました。

初診で来院された患者さん(50代男性)で「咬むと奥歯が少し痛い」というのが来院された理由です。
口腔内を見ると確かに穴が開いていて、患者さんもむし歯が原因だと思っていて、仕事で忙しいから検査とかはいいから早く削って治してほしい、ということでした。
ところがレントゲンを撮ると、むし歯はたいしたことなく、むしろ顎の骨の中に大きな腫瘍ができていて、それが原因で腫瘍周辺の歯の根が吸収して結果的に「咬むと奥歯が少し痛い」という症状だったのです。
これはエナメル上皮腫という顎骨腫瘍で、大学病院に紹介し、入院手術をして左下の歯(画面でいう右下)の歯を全て抜歯になりました。
もし検査をせずにちょっと削って治していたら、顎の骨を半分全て切除することになっていたかもかもしれません。 似たような例が他にも見つかることがあります。
まれな例ではありますが、正しい診断をおこなってきちんと治すために、検査は必ず必要だと考えています。

そして診断後に治療を進めていきますが、治療計画も複数の要素を総合的に判断して立てます。
具体的には、患者さんの年齢、現在の歯の本数、症状のある歯の位置、動揺があればその大きさ、治療の難易度、治療後の耐久性、磨きやすさ、噛み合わせの重要度、他の歯への影響度、本人の歯磨き能力、生活習慣、喫煙の有無など、総合的に判断して立てます。
正しい診断をおこなってきちん治療計画を立てるためにも、検査は必ず必要だと考えています。

ほとんどの原因は何か?

(事故や怪我などの外傷や、嚢胞・腫瘍などの顎骨病変、顎関節症などまれな例を除く)ほとんどのお口の中の問題、いわゆるむし歯や歯周病の原因は何でしょうか?

私の答えは2つあります。
1つはプラーク(細菌)そのものであり、もう1つはそれを除去できていないこと(生活習慣)です。
ただ残念ながら口腔内の細菌をゼロにすることはできないので、実際には毎日の歯磨きで的確に磨いて細菌の量を減らす、プラークをコントロールすることができるようになることが重要になります。
つまり歯科の治療において最も重要なことは、プラークをコントロールすることができるようになることです。
もっと簡単に言うと、ちゃんと歯磨きができてないとどんなに良い治療しても無意味ということです。

私は10年以上の臨床経験を通して、過去に1度治療してある歯がまた悪くなって当院に来たり、その後当院で再度きちんと綺麗に治した歯が数年後にまた悪くなって戻ってくる、そういう歯を数え切れないほど診て来て、歯を削る治療をすればするほど、最終的には抜歯になってしまう、その度に無力さを感じていました。
さらに抜歯になってしまった所を極力歯と同じように再生させるべく、インプラント専門医の資格も取得して、完璧なインプラント手術をしても、数年後にそのインプラントが揺れたり抜けたりすることも100本中1~2本ありました。1本約40万円かけてその結果はありえない。非常に無念な思いでした。(もちろん無料で再手術、または全額返金していますが、私自身が無念な思いで、自責の念にかられるのです)
そこで気づいたのは、結局プラークコントロールができなければ、ちゃんと意味のある歯磨きができなければ、歯科医師がどんなに高度な技術を学んで完璧に処置しても、それは無駄な仕事だった、ということでした。


例え治療直後その時は(一時的に)良くなったとしてもまた悪くなってしまえば結局無駄な時間とお金を使って同じことを繰り返しているに過ぎないのです。
これからは患者さんにも自分にも、そういう無駄で無念なことはしたくありません。
なので、大事な事なのでもう一度言うと、歯科の治療において最も重要なことは、プラークをコントロールができるようになること、なのです。

だから当院では初診時や定期検診時に必ず歯茎の検査(歯周病の検査)をしますし、プラークが目で見えるように染色液で赤く染め出して歯磨き指導をする、それも治療前にやる。そうすることで治したところが2度と悪くならないようにする。それこそが最も重要な事だと考えています。

歯ブラシだけではなく、デンタルフロスや歯間ブラシなど自分にあったサイズのものを上手に使って、的確で効果的なプラークコントロール、歯磨きができるようになれば、ずっとあなた自身の健康を保つことができ、さらにあなたのパートナーやお子さんにも伝えることができれば、その知識や技術はもう一生の財産になるのではないでしょうか。
当院には国家資格である歯科衛生士免許を取得している歯科衛生士がたくさんいます。
歯科衛生士はプラークコントロールのプロです。
ぜひ利用してほしいと思います。

私とあなたの共通のゴールは?

ここまでしっかりとお読みいただいた方ならもうおわかりかもしれません。
私とあなたの共通のゴール、それは「歯の定期検診を習慣化すること」です。
的確で効果的な歯磨きの習慣を身につけ、一通りの治療が済んだ後は、あとは維持していくだけなのでそんなに労力はかかりません。
歯石除去、クリーニングの後、4ヶ月位経つとどうしても、歯磨きのプロである歯科医院のスタッフでも、わずかに磨き残したプラークが堆積して歯石がつきつつある状態になります。
なので、4ヶ月に1回、年3回位の定期的な検診をした方が望ましいですし、そのスケジュールも先におさえてしまう方がいいと思います。
後から、時期が来てからだと、つい忙しかったり、面倒だし痛くないからいいや、となってしまいがちで、すごろくや人生ゲームのゴール直前でスタートからやり直しのマスで止まった状態になってしまうので、非常に勿体無いです。 もうちょっとでゴールだったのに!
歯科に限らず、「面倒なことこそ、先にスケジュールを決めて、習慣化してしまうことが、成功させるポイント」という信念のもと、当院では4ヶ月先の定期検診の予約を、日付と時間を決めて予約をとっています。

以上が、いきなり削ったり治療せずに、検査やクリーニングを先におこなう理由です。
「いいから痛いところだけさっさと治してよ」という方に当院は向いてないかもしれません。
ただ、削れば削るほど、治療すればするほど、歯はなくなっていきます。
その場しのぎのいい加減な対応ではなく、将来しっかりと歯を残していきたい、そういう方に当院は向いていますし、この地域、そしてひいては日本のためにもしっかりと将来を見据えた歯科医療を提供していきたいと思っています。